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2018/05/29

日本消費経済新聞2232号(2018年5月25日発行)

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消費者契約法改正案、衆院で修正
社会生活上の経験不足要件削除できず
 消費者契約法改正案は5月 23 日、 衆議院消費者問題特別委員会で与野党共同で修正案が提出され、 可決された。 野党は、 過大な不安をあおった場合、 恋愛感情などの人間関係を乱用した場合の契約取消権に追加された 「社会生活上の経験不足」 の要件削除を求めたが、 与党の一部に強硬な反対があり、 認知症高齢者や障害者等の過大な不安をあおった場合、 中高年を含む霊感商法等に対応する2項目を追加する修正にとどまった。 審議の途中で、 大臣自ら、 社会生活上の経験不足の解釈を示した衆院本会議答弁を修正すると発言。 委員会審議がストップした。 修正発言は撤回されたものの、 委員会での答弁内容は本会議とは異なったままだ。 このため、 デート商法や過大な不安をあおられた中高年への適用は非常に限定される危惧がさらに強くなった。 修正案は 24 日、 本会議で可決され、 衆議院を通過する。 参議院での精緻な検討とさらなる修正が求められる。(相川優子)

2類型の追加で補足
参議院でさらなる修正を
前代未聞、本会議答弁を修正
撤回後も答弁不明確
 前代未聞のことが起きた。 5月 21 日、 まさに修正で最大の論点となっている 「社会生活上の経験が乏しい」 要件の解釈部分の本会議答弁を、 福井照消費者相自らが翻し、 修正すると発言。 「聞いていない」 「止め止め」 「速記止めて」 など怒号が飛び交い、 その日の審議は打ち切りになった。 
 審議が途中で打ち切られ散会になるのは、 2009 年に消費者庁創設を議論するために消費者問題特別委員会が設置されて以来、 初めてのことだ。 
 衆院本会議 (5月 11 日) の大臣答弁。 「例えば、 霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、 勧誘の態様に特殊性があり、 通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、 一般的には本要件に該当する」 としていた部分を、 削除するという内容。 
  「社会生活上の経験が乏しい」 要件に該当するのは、 「若年者」 とし、 「若年者でない場合でも、 民法により救済される」 に改めると発言した。 
 質問に立った無所属の会の黒岩宇洋氏 (無所属の会) が、 消費者庁の職員が同日昼ごろ、 5月 11 日本会議の大臣答弁を修正する内容の紙を持ってきたと報告。 その内容を確認する質問に福井消費者相が答え、 本会議答弁を修正すると発言した。

「若者以外は該当しない」
「引きこもり、対象になりうる」
 5月 21 日の大臣答弁は、 この発言の前に、 すでに、 これまで (5月 11 日、 5月 17 日) とはガラッと変わっていた。 同日の立憲民主党の尾辻かな子氏への答弁は、 「霊感商法の被害者となった消費者でも、 その者が若年者でない場合には、 一般的には本要件に該当しないと考えられる」 「しかし、 就労経験がなく、 自宅に引きこもり、 他者との交流がほとんどないなど、 社会生活上の経験が乏しいと認められる者について は本要件に該当し得る」 というもの。 
 引きこもりや社会とほとんど交流がない人しか、 社会生活上の経験が乏しい要件に該当しないのでは、 中高年者が対象になることはほとんどない。 
 さらにデート商法の適用範囲についても 「中高年においては必ずしも、 事業者の行為により類型的に困惑する消費者とは言えない」 と福井消費者相は答弁。 
 尾辻氏は、 「30 歳代以上は救えないということか。 5月 11 日、 5月 17 日の答弁とも異なる」 と激怒。 「本会議答弁を撤回することなどありえない」 と驚きあきれる一幕があった。 デート商法については、 17 日答弁では 「特に結婚等の人間 関係形成に係る経験というのを考慮するということが考えられる」 と答弁していた。 
 社会生活上の経験が乏しい要件を入れた理由についても、 「社会生活上の経験が乏しいという要件は、 主として若年者層を消費者契約による被害から保護することを念頭に、 主として若年者層を念頭に保護すべき対象者の属性として規定した」 と答弁。 本会議での答弁 「被害事例を適切に捉えるために、 経験の有無という客観的な要素により、 要件の該当性の判断が可能となるよう法制化した」 とは、 大きく変わっていた。

立法府欺く行為
国会審議覆す
 大臣の本会議答弁修正発言で審議がストップし、 大臣がこれを撤回することで 23 日午後5時 45 分から3時間の審議で採決することが決まった。
 23 日夜、 3度目の質問に立った尾辻氏は、 「立法府を欺く行為」 と糾弾。 「本会議答弁を聞いて委員会で質問してきた。 今までの質疑が全部パーになっている」 と憤慨し、 「許されない行為」 と述べた。 
 共産党の畑野君枝氏は、 「法案の審議入りの本会議答弁で示した政府の条文解釈を、 委員会審議の最終段階になって一方的に変更することなど前代未聞」 と指摘。 「撤回で済まされる問題ではない」 と国会審議を覆す重大行為と認識して反省することを求めた。 さらに、 本会議答弁の内容を1つずつ確認し、 本会議での答弁が維持されていることを確認した。

「国会を冒とく」福井大臣
修正撤回後も、本会議と答弁異なる
 これに対し、 福井消費者相は、 「国会に対する冒とく」 と答えて、 陳謝した。 ただし、 同日の委員会での答弁は、 本会議の答弁とは異なったままだ。 尾辻氏は、 「変わっていない。 本会議答弁を維持するなら変わるはず。 こんなぐちゃぐちゃのままでいいのか。 もう1回整理して審議をやり直した方がいいのではないか」 と声を荒げる場面が何度もあった。 
 この日の大臣答弁は 「若年者でない場合であっても、 就労経験等がなく、 外出することも めったになく、 そして他者との交流がほとんどないなど、 社会生活上の経験が乏しいと認められる者については、 本要件に該当し得る。 これは例示で、 ほかの例も排除しない」。 デート商法については 「年齢で制限するわけではない」 にとどまっている。 「消費者が若年者で ない場合であっても、 社会生活上の経験の積み重ねにおいて、 これと同視すべきものは本要件に該当し得るということで整理した」 という内容だ。 
 付帯決議には、 本会議の大臣答弁を踏まえて、 「年齢にかかわらず、 社会生活上の経験が乏しい場合があることを明確にする」 ことが盛り込まれたが、 答弁は不明確なまま。 行政府が立法府に法案を提出し、 本会議で説明されたときとは、 「社会生活上の経験が乏しい」 要件を適用する政府の解釈はかなり狭くなっている。 デート商法や、 不安をあおられた場合の中高年者はほとんど対象にならない懸念も出ている。 新たに追加された、 2つの取消権の要件もあまりに厳格だ。 (詳細は解説)

施行後2年以内につけ込み型取消権
地方、恒常的財政支援策を検討
 付帯決議には、 平均的損害の推定規定創設等立証責任の負担軽減、 消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して勧誘して契約させた場合の取消権創設を検討し、 施行後 2 年以内に必要な措置を講じることを盛り込んだ。 地方消費者行政の体制の充実・強化のための、 恒常的な財政支援策を検討することも盛り込まれた。

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