日本消費経済新聞は、生活者優先時代を実現するため、消費者行政、消費者問題、企業の顧客対応の情報を全国に発信する専門紙です
 

2019/12/18

日本消費経済新聞2284号(2019年12月15日発行)

Tweet ThisSend to Facebook | by:管理者
ジャパンライフ被害高齢女性悲痛な声
自らを責め、家族に責められ
毎日泣いて、何度も死のうと思う
  「全財産を入れてしまい、 体調が悪く、 何度も死のうと思う」 「全財産を入れ、 年金も毎月4万円しかなく毎日泣いている」 「家族からも責められ、 毎日家にいるだけでもつらい」 「家族からも見捨てられ、 あとは死ぬだけ」 ―。 ジャパンライフの被害に遭った高齢女性らの声はあまりに悲痛だ。 体調を崩し、 絶望の日々の中、 家族からも責められ、 自らを責めている。 しかし、 ジャパンライフには、 一度接触してしまうと、 蜘蛛の巣に引っかかった蝶のようにからめとられ、 全財産をむしり取られるあまりに大胆で巧妙な罠が仕掛けられていた。 キーワードは 「高齢者に収入、 いつまでも若々しく、 楽しい居場所を作る」。 天性の詐欺師、 山口隆祥元ジャパンライフ会長の手にかかれば、 無防備な高齢者はひとたまりもない。 きっかけは 「会いたい」 「無料でエステがしてもらえる」 という友人や知人からの連絡。 一歩、 店舗に足を踏み入れると、 緻密に計算された手法で巧みに被害者を誘導して、 契約に向かわせ、 全財産をつぎ込ませる。 だます側はプロ中のプロ。 やはり、 だます側が悪い。 家族は、 被害者に寄り添ってあげてほしい。 そして私たちも被害者に寄り添い今、 何ができるのか、 今後同じ被害を生まないために何をすべきなのか、 法制度をどう変えるべきなのか、 真剣に考えていかなければならない。(相川優子)

山口元会長、巧妙すぎる罠
「高齢者に楽しい居場所」
業務停止命令中に大規模勧誘
命令後の「3月、売上30億円」
 ジャパンライフは、 100 万円から 600 万円もする磁気治療器を購入してレンタルオーナーになると、 販売価格の6%を還元するとうたって高齢女性らを中心に老後の資産のほとんどをつぎ込ませる。 約 7000 人がだまされ、 約 1800 億円の消費者被害を出した。 
 消費者庁は、 ジャパンライフに4回の業務停止命令を出している。 1回目は 2016 年 12 月 16 日。 訪問販売、 連鎖販売取引、 預託取引の業務停止命令3カ月。 2回目は 2017 年3月 16 日。 同じ取引で9カ月の業務停止命令だ。 
 2度目の業務停止命令中の 2017 年5月9日。 レインボーブリッジが一望できる豪華なホテルで、 約 1000 人が集められ、 大規模な勧誘が繰り広げられていた。 ホテルに連れ出しての勧誘は、 家庭に訪問するわけではないが、 「訪問販売」 に該当する。 
 高揚感をあおる音楽が会場に響き渡り、 色とりどりのスポットライトを浴びて登場したのは、 ジャパンライフの山口隆祥会長 (当時)。 盛んな拍手、 握手を求める人、 写真を撮ろうとする人がかけより、 さながら宗教団体のカリスマのようだった。 
  「3月 (2度目の業務停止命令が出た月) 1カ月の売り上げ、 悲願の30 億円を達成しました。 4月はなんと35 億 5000 万円」 ―。 会場からは割れるような拍手が沸き起こった。 

「高齢者に仕事、若々しく」
「寂しくないようイベント」
  「高齢者が、 一生涯元気で、 歩ける、 しゃべれるを作るのがジャパンライフ」 「すごい産業の話」 「100 兆円市場、 子ども、 孫の世代に花が咲く」 「これが分かっているだけでも皆さんはすごい」。 「中国チンタオの工場で3部制で 24 時間作っても間に合わない。 こんな商品が売れてる会社ってありますか」。 山口会長は、 巧みな話術で語りかける。 
  「装着タイプ磁気治療器は、 長寿高齢化の現在、 膨大な需要がある」 「今後発展する高齢者ビジネス、 高齢者が毎月収入が得られる仕事を提供する」 「高齢者をいつまでも若々しくする」 「高齢者が楽しく集まれる場所を常に作る」。 
 さまざまなパネルを使って、 「ジャパンライフは みんなやっている」 と説明した。 
 山口会長は、 「今日も楽しい楽しいお食事会だってある。 石川さゆりさんの歌謡ショーだってある。 寂しくないようにありとあらゆるイベントをやっている」 「腰の痛い人は 3800 万人、 膝が痛い人は 3000 万人。 これが装着タイプ (の磁気治療器) で治るんだよ」 「特許もある。 厚生労働省の認可もある。 ジャパンライフの専売」 と畳みかけ、 「みなさんとともに世界中の人たちの健康と元気を作っていきましょう」 と締めた。 

高額契約者を表彰
有名芸能人のショーも
 同日は、 山口ひろみ社長 (当時) が、 参加者は香港やシンガポールからの参加も含め過去最高の 1018 人と報告した。 「社長になって 10 年で店舗は 80 店舗になり、 2億円以上契約しているミリオネア会員が 24 人になった」 と話し、 その年に2億円以上を達成したという人 12 人にひろみ社長自らが楯と花束を授与。 記念撮影も行った。 
 業務停止命令後3カ月続けて新商品を出し、 今後も新商品が出るとも報告。 食事会、 歌謡ショー、 大抽選会などと併せ、 割引価格による大規模勧誘が行われた。 
 この国際大会には、 高額契約者や社員が目を付けた顧客が全国各地から無料で招待されている。 地域ごとにバスで動員しているが、 経費を上回る相当額の契約が行われたと見られる。 

全国80店舗は地域の「サロン」
社員は親切、無料でエステ
 では、 全国で 80 に拡大したジャパンライフの各店舗では、 どのような勧誘が行われ、 どのような居場所や仕事が提供されていたのか。 
 知人や友人から、 「会いたい」 と電話があり自宅で無料の初回マッサージを受けたり、 「無料のエステ」 に誘われたりして店舗に出向いているケースが多い。 店舗に行くと社員さんは 「それは優しく、 親切」。 まずは笑顔で握手をし、 手を取ってスキンシップを図りながら迎えてくれる。 
 特別なマッサージ用の服に着替え、 タオルが敷かれた磁気マットレスの上にうつぶせになると、 4人1組で首から足のつま先まで死海の塩が入ったジャパンライフのジェルなどでリンパマッサージが始まる。 約 30 分。 ふき取った後、 保湿用の化粧水やクリームなどを塗ってもらい、 頭、 首、 手首、 足首、 腰など 10 種類の磁気治療器を装着させられ、 磁気ベッドに寝かせられた。 体がポカポカし、 楽になったような気がした。 
 社員やスタッフは家族が嫌がるような話も丁寧に根気よく聞いて大切にしてくれる。 「銀行に預けても利息はほとんどつかない、 マイナンバー制度で税金で持っていかれる」 などと説明された。 

毎週ある説明会ではお弁当
本社見学で東京観光
 月3回、 各店舗で説明会が行われ、 お弁当が出る。 毎月1回は必ず山口元会長かひろみ元社長がやってきて 「地方大会」 の名目で、 ホテルや旅館 (最後の1年くらいは店舗になった) で説明会がある。 お弁当は豪華になり、 抽選会もある。 山口元会長は磁気ベストや磁気ベルトを装着して颯爽と現れ、 スライドなどを使って説明した。 本社を見学しスカイツリーなどを巡る東京観光もある。 有名演歌歌手のショーも毎年行われた。 
 契約額に応じてポイントが付与され、 ポイントを貯めて霧島市にある迎賓館と呼ばれる施設に招待され、 温泉に入ったり、 バーべキューを楽しんだりした人もいる。 中国チンタオの工場見学も予定されていた。 

マルチで勧誘すれば収入
エステや社員手伝いで時給も
 配当金以外に、 高齢者が収入を得ることができる仕組みも準備されていた。 知人や友人を誘って契約が成立すると、 契約額に応じて収入が入る。 契約をしてレンタルオーナーになり 「活動者」 になると、 今度は自分がリンパマッサージをしたり、 社員さんがスライドを映すのを手伝ったり、 やってきた人と話をして時給をもらうこともできる。 時給は 850 円から 950 円程度。 契約額が高額になると、 時給は 1000 円を超えたという。 
 ミカンやお菓子はテーブルの真ん中に盛るのでなく高齢者1人ひとりに配ることなどまで細かく指導された。 

信用して一度契約すると
全財産つぎ込まされる
 仲良くなった社員が自宅にやってきて、 買い物や病院に薬を取りに行くときに車に乗せて連れて行ってくれた。 自宅で作った煮物を出すとおいしそうに食べてくれた。 「今月はノルマが達成できていない」 と社員に言われると、 自分の子どものように感じ、 どんどん契約額が膨らんだ。 毎月配当金が入ってきた。 「みんな預けてジャパンの利子で暮らせばいいよ」 「普通預金は 100 万円以下に」 などと言われ、 郵便局や銀行、 農協の定期預金を皆解約した。 今度は保険を見直す専門の職員がやってきて、 ジャパンライフに預けた方が得だと計算式を見せられ、 保険まで解約してジャパンライフにつぎ込んでしまっている。 
 無料でエステを受けたり、 食事を振る舞われると、 契約しないと悪いような気になってくる。 月に4回程度行われる説明会で用いられていたスライドが、 安倍首相の桜を見る会、 大臣との食事会、 政治家や著名ジャーナリストの懇談会、 特許を取っている特許庁の長官が顧問になった、 アメリカ大統領の就任式への招待状などだった。 信用してしまい1回契約すると、 ほぼすべての財産をつぎ込んでしまう。 「社員が車で送り迎えをしてくれ、 食事も出て、 友達もできた。 活動すれば時給ももらえた。 配当金は毎月滞ることなく入った。 スライドの内容を疑うことなど考えられなかった」。 

震災の保険金や東電補償金
地域の口コミで把握
 地方大会の帰り際には、 「健康になってもらいたい人」 の名前や住所を書かされた。 健康になってもらうという名目で、 社員と出向いたり、 店舗に来てもらったりした。 東日本大震災で家を流された保険金や東電補償金がどのくらい入ったか、 地域の口コミで把握された。 社員は何度も自宅を訪問し、 畑仕事を手伝った。 山口元会長やひろみ元社長がやってくる日に誘い出し、 元会長や社員数人が囲んで面談室で勧誘した。 
  「健康、 お金、 孤独」 ―。 多くの高齢者が3K と呼ばれる不安を抱えている。 無防備で善良な高齢者がいったんかかわってしまうと、 全財産をむしり取られてしまう計算しつくされた勧誘手法が、 周到に準備されていた。 もう一度言おう。 だまされた側ではなく、 だます方が悪い。

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