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2019/12/06

日本消費経済新聞2283号(2019年12月5日発行)

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ジャパンライフ問題を総括①
なぜ被害拡大防げなかったのか
安愚楽牧場の教訓生かせず
 ジャパンライフの消費者被害額は約 1800 億円。 1987 年に破綻した豊田商事は約 2000 億円。 2011 年に破綻した安愚楽牧場は約 4200 億円。 消費者庁は、 安愚楽牧場の破綻で国家賠償請求訴訟を提起されながら、 なぜ、 過去の教訓が生かせず、 またしても甚大な消費者被害を生じさせてしまったのか。 今もまた、 同様の大きな消費者被害が発生しようとしている。 これまで取材から問題点を提起する。(相川優子)

2014年9月、10月なぜ行政指導
「本件の特異性」、課長レク
天下った元課長補佐が作成
 2017 年4月 18 日の衆議院消費者特で、 国民民主党の井坂信彦氏が 「本件の特異性」 と題する文書の存在を明らかにして以降、 独自に取材を進めてきた。 「本件の特異性」 と題する文書、 独自に入手した課長レク資料、 審議官レク資料ともにジャパンライフに天下った水庫孝夫消費者庁取引対策課元課長補佐が作成したものだった。 
 ジャパンライフへの相談件数は 2010 年以降毎年 140 件を超える。 なぜ、 2014 年9月と 10 月に行われた行政処分は、 指導にとどまったのか。

「処分は指導が適当」
元課長補佐が報告書
 まさに、 ジャパンライフに天下った水庫元課長補佐がジャパンライフへの相談内容の調査を担当していた。 2014 年7月 31 日付で、 水庫名で 「事前調査報告書」 を着任して間もない山田正人課長に提出している。 
 結論は、 「記載不備、 不交付及び書面閲覧不備の疑いを持って処分乃至は指導を行うことが適当」 とされていた。 「業務及び財産の状況」 を記載した書面 (場合によっては、 早急に作成するよう指示の上) を確認することが一方では急務ともしている。 
2012 年度以降の 335 件の相談を対象にしているが、 消費者聴取は2件 (本人1件、 本人以外1件) しか行っておらず、 「相談内容からは行為違反は確認できなかった」 としている。 

天下りで手心加えたのか
2013年10月調査報告と差
 2013 年 10 月に、 別の職員が調査した 「予備調査報告書」 が当時の山下隆也課長に提出されている。 この時点で苦情相談の大半がレンタルオーナー契約等に関するもので、 ジャパンライフが 「高齢者を勧誘し、 高配当をうたい、 多額の投資をさせている」 ことを指摘。 契約金額が数百万から数千万、 1億円近くに及び破綻した場合は甚大な被害が予想されるとして、 「預託法の処分事案として本調査に移行することとしたい」 と報告されている。 
 報告内容にあまりに違いがある。 水庫元課長補佐が違反行為なしと報告したこと自体に天下りの影響がなかったのか、 今後の調査が求められる。

「行為違反はない」 
自ら2つの文書で説明
 水庫元課長補佐が作成した 2014 年7月 31 日付課長レク資料によると、 水庫元課長補佐は2つの文書を用いて、 課長に説明をしている。 「事前調査報告書」 と、 要回収とした 「本件の特異性」 と題する文書だ。 レク資料を含め、 すべて水庫元課長補佐が作成したことが確認できた。 
 本件の特異性と題する文章は、 検証方法の選択を課長の判断にゆだねているが、 「※行為違反なしを前提」 であることが強調されている。 「※政治的背景による余波懸念」 とも記載されているが、 具体的な内容の記載はない。 
 水庫元課長補佐は、 課長レクの中で、 事前調査では預託法上は、 書面交付や書面不備、 閲覧不備の疑いにとどまり、 特商法上も含め行為違反の確認は取れなかったと報告したとしている。 担当弁護士から立入検査の方がリスクが低いと助言されたと記載しているが、 違反行為がない場合に、 立入検査に入ることを弁護士が是とするのだろうか。 この点も疑問が残る。

担当者交代で再調査
立入検査に方針転換
 山田課長はなぜ、 指導を選択したのか。 一連の取材の過程で、 当時山田課長に話を聞いている。 「水庫課長補佐からは、 預託法は 2013 年9月に政省令を改正し家庭用治療器を適用対象に追加したばかりのため、 ジャパンライフにまだ自覚されていない、 特商法は違反認定する事実がないと報告を受けた。 行為違反がないにもかかわらず立入検査をすることに違和感があった」 と説明。 このために、 まずは指導が適当と判断したという。 
 しかし、 水庫元課長補佐が 2015 年3月末に退官して以降、 方針は大きく転換されていた。 立入検査を決めたのも山田課長だった。 
 水庫元課長補佐が退官するのに伴い、 3月以降担当者が交代。 4月になり全く報告の内容が異なり指導もされていないという報告を受けた。 「方針を転換し立入検査の準備を進めていたところだった。 政治的圧力はなかった」 とも話した。 
 立入検査に入る矢先に突然、 異動になっている。 

立入検査から処分までなぜ1年3カ月
ジャパンライフ立入検査で
元課長補佐の顧問契約書
 2015 年9月 10 日、 消費者庁はジャパンライフの立入検査に入るが、 ここで水庫元取引対策課長の顧問契約書が見つかった。 よりによって自らが指導してきたはずのジャパンライフの顧問として天下っていた。 
 消費者庁には激震が走ったはずだ。 5カ月も調査し天下りを認定しなかった問題は後述する。 

支離滅裂 1回目の業務停止命令
なぜ3カ月、勧誘目的不明示
 最大の問題点は、 立入検査から 2016 年 12 月 16 日の 1 回目の行政処分まで 1 年 3 カ月もかかり、 勧誘目的不明示等しか違反を認定しない業務停止命令3カ月という支離滅裂な内容だったという点等。 違反は、 預託法の書面記載義務違反、 特商法は勧誘目的不明示しか認定されていない。 腰痛も治るなどと言って勧誘している事例が含まれているにもかかわらず、 不実告知も認定されていない。 しかも違反認定事例は 2015 年 1 月~3 月だ。 

レンタル収入、支払の10分の1
立入検査で把握できたはず
 ジャパンライフの破産手続きの中で、 ジャパンライフの預託商法は 2003 年から始まり、 最初から自転車操業の構造だったことが明確にされている。 1回目の債権者集会 (2018 年 11 月 12 日) では、 2017 年後半にはレンタルオーナーに支払うべき金額のほぼ 10 分の1しかレンタルユーザーの収入がなかったことを報告されている。 
 2017 年3月 10 日の衆院消費者特で国民民主党の大西健介氏が、 「2015 年 10 月には現物まがいであることを知っていた」 「毎月のレンタル収入 5000 万円、 レンタルオーナー支払額5~6億円、 新規契約少なくとも 20 億円、 被害額約 1400 万円と想定していた」 という数字を質問の中で明らかにしているが、 まさにこの数字を立入検査からほどなくして消費者庁は把握していたと思われる。 
 執行担当者であれば、 胃が痛く夜も眠れない数字のはずだ。 しかし、 1年3カ月もかけ、 不実告知も認定せず3カ月の業務停止にとどめたのは、 あまりに問題がある。 これで幕引きを図ろうとした、 あるいは、 一定期間恣意的に放置したのではないのかと疑いたくなるほどお粗末だ。 しかも、 自転車操業であることも公表していない。 

内規に7カ月ルール
立入検査から公表まで3カ月
 当時は、 内部規定に着手から公表まで7カ月ルールがあると指摘された。 2014 年度以降業務停止命令3カ月の 26 業者の分析を求めたところ、 1年超1事業者、 6カ月から1年以下6事業者、 6カ月以下 19 事業者だった。 
 7カ月ルールでは、 「立入検査から公表までは3カ月」。 1カ月対応が遅れれば、 被害額が何十億円も広がる最優先で取り組む事案だったはずだ。 消費者庁は一体何をやっていたのか。 

レンタル事業の収支
破綻後も黒塗りのまま
 情報開示請求で、 同日記者に配布された説明資料と、 ほぼ同様の資料の存在が確認された。 
 1枚だけ多く、 最後の 22 ページ目に 「レンタル事業における売上等」 として、 レンタルの売上高とレンタルオーナーへの支払額が記載されている。 本紙記者が初回記者会見時から質問し続けてきた数字が書かれていると見られる。 破産手続き開始決定後に2度目の開示請求をしたが、 明らかにされないままだ。 不服審査請求も棄却された。 悪質性を明確にできる相応の処分をし、 この時点でこの数字を公表し、 多くのマスコミが報道していれば、 被害はここまで拡大することはなかった。 

5カ月かけなぜ、天下り認定しなかったのか
「自らの調査で天下り認定できた」
再就職監視委への開示請求で明白
 消費者庁は、 天下りを認定することが可能だったにもかかわらず、 5カ月も調査して天下りは認定できなかったと報告している。 内閣府再就職等監視委員会の調査では2カ月弱で天下りを認定している。 
 しかも、 消費者庁は違反を認定できなかった理由に、 「現職中に元課長補佐がジャパンライフトップに面談を求める決裁文書 (伺い書) を入手したが、 この決裁文書はジャパンライフ職員が元課長補佐から受けたストレスを解消するために偽造したと供述し、 その可能性は否定できないものだった」 と、 あきれた内容を挙げていた。 
 本紙が内閣府再就職等監視委員会に情報開示請求をした結果、 伺い書は2通あった。 面会日の変更を求めていた。 同委調査報告書には 「消費者庁が調査でいた資料のみで違反認定は可能」 と明記されていた。 人事担当者が3回目のメールで進行を察知し違反しないよう指導すべきだったとも指摘している。 
 消費者庁が顧問に就任していた事実を内閣府再就職等監視委員会に報告したのは、 1カ月後の 10 月7日。 消費者庁が国家公務員法に基づく 「任命権者調査」 に入り、 「違反を認定できない」 とする調査結果を報告したのは 2016 年2月1日。 監視委が 「委員会調査」 を決定したのは、 わずか3日後の2月4日。 3月 24 日には違反認定を公表し、 「調査に5カ月近くを要し違反を認定できなかったのは遺憾」 と遺憾の意を表明している。 
 調査を引き延ばし、 組織的に隠ぺいをはかったのではないかという疑念がある。 また、 消費者庁が働きかけをして、 元課長補佐が顧問を退職したのは 2016 年5月 10 日。 これまでの期間、 意図的に行政処分を遅らせたのではないのか。 影響がないか検証する必要がある。 (続きは次号)

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