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2018/06/17

消費者契約法改正 日本消費経済新聞 2234号(2018年6月15日号)掲載分

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消費者契約法成立
参議院で再修正ならず
要件解釈、国会へ事前提示要請
 衆議院で修正された改正消費者契約法が6月8日成立し、 6月 15 日に公布された。 参議院で再修正することはできなかった。 参議院消費者問題特別委員会は、 過大な不安をあおった場合、 恋愛感情など人間関係を乱用した場合の契約取消権に盛り込まれた 「社会生活上の経験が乏しい」 要件について、 相談員が現場で事業者にファックスして活用できるよう整理した解釈を事前に提出することを消費者庁に求めた。 参議院の審議では、 修正を撤回した衆議院本会議大臣答弁が、 維持されることが繰り返し確認された。 しかし、 「例えば、 霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、 勧誘の態様に特殊性があり、 通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、 一般的には本要件に該当する」 とした問題の衆院本会議答弁 (5月 11 日) は、 6月6日の参議院消費者特委でも、 再整理という名目で 「勧誘の態様に特殊性がある場合には、 取消権が認められやすくなる」 という答弁に後退した。 維持されるとした本会議答弁を反映したどのような解釈が消費者庁から参議院消費者特委に提示され、 了承されるのかが注目される。 改正法は、 来年6月 15 日から施行される。(相川優子)

修正撤回後の衆院本会議答弁
参院消費者特で、 またも後退
 6月6日、 参議院消費者問題特別委員会で、 野党筆頭理事を務める国民民主党の森本真治氏は、 衆議院本会議での答弁内容を審議の途中で突然変更して撤回した問題について、 「その間の審議時間をすべて無駄にしたわけで、 国会軽視という言葉では済まされない。 国会の権能を著しく毀損 (きそん) させる行為」 と厳しく批判。 福井照消費者担当相に対し、 「どのように責任を取るのか。 自らの処分をどう考えているのか」 と追及した。 
 これに対し、 福井消費者相は 「2度とかかる事態が生じないよう気を引き締めてしっかり職責を果たす」 との回答にとどめた。

勧誘の態様に特殊性ある場合
「取消権認められやすくなる」
 国民民主党の矢田わか子氏は、 「社会生活上の経験が乏しい」 要件の解釈が、 広範囲に高齢者を対象とする定義から、 審議の中で時系列的に狭められるような発言に変わっているとして、 大臣にその経過について明快な答弁を求めた。   これに対し、 福井消費者相は、 「それぞれの質問の内容に応じた回答」 としか答えず、 これまでの答弁をさらに再整理。 ① 「本要件は年齢によって定まるものではない」 ② 「若年者でない場合でも、 社会生活上の経験の積み重ねにおいてこれと同様に評価すべきものは本要件に該当する」 ③ 「勧誘の態様が悪質なものである場合などには、 消費者による取消権が認められやすくなる」 という趣旨だったと回答した。 しかし、 この③の回答は、 この時点で、 またしても衆議院本会議答弁から後退している。

衆院本会議大臣答弁
「高齢者でも一般的には該当」
 修正が撤回された衆院本会議大臣答弁は、 「例えば、 霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、 勧誘の態様に特殊性があり、 通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっ ても、 一般的には本要件に該当する」 だった。 同日、 答弁された③ 「勧誘の態様が悪質なものである場合などには、 消費者による取消権が認められやすくなる」 では、 明らかに後退している。 
 福井消費者相は 「衆院本会議答弁は維持されている」 と何度も繰り返すが、 相談現場から事業者にファックスする紙に、 本会議答弁通りに記載された場合と、 再整理後の文言が記載された場合では、 消費者や事業者の受け止めは大きく異なる。 
 ②については、 大臣答弁修正・撤回後に突然出てきた答弁で、 「社会生活上の経験の積み重ねにおいてこれと同視すべきものは本要件に該当する」 が 「同様に評価すべきもの」 と言葉が変更されただけだ。 本会議答弁を変更していないとしながら、 そのまますり替えられた答弁が参議院でも同様に繰り返されている。

実際の答弁
矛盾していないか
 立憲民主党の杉尾秀哉氏は、 「衆院本会議答弁をそっくりそのまま維持するのか」 と厳しく追及。 「答弁は維持している」 と回答した福井消費者相に対し、 本会議答弁の修正撤回後、 「契約の目的や勧誘の態様」 の関係について一度も答弁していないと反論。 「社会生活上の経験の積み重ねにおいて、 若年者と同視すべきもの」 という新たな条件を示し、 「社会生活上の経験の積み重ねが、 契約を締結するか否かの判断を適切に行うために必要な程度に至っていない消費者であれば、 年齢にかかわらず取り消し得る」 の 2 つのパターンでしか回答していないのは矛盾していないかと切り返した。 
 これに対し、 福井消費者相は、 答弁を4項目に再整理 (囲み参照) して回答した。 しかし、 契約の目的となるものや勧誘の態様に特殊性がある場合の答弁は 「社会生活上の経験が乏しいことから過大な不安をあおられる消費者が多いと考えられ、 取消権が認められやすくなる」 に置き換わっていた。 矢田氏への答弁と同じで、 「同視する」 も 「同様の評価」 に言葉が変わった。

「衆院本会議は確認的答弁」
「一般的な説明必要」消費者庁
 川口康裕消費者庁次長は、 「衆議院で確認的な答弁があるが、 基本的に一般的な説明があり、 特殊、 悪質ということになれば取り消しが認められやすくなることを前提に答弁している。 その答弁自体から答えが一律に導き出せるようなものかということについて質問があり、 一般的な定義、 具体例を示して、 それから、 若年者と同視、 同様に評価できるような場合の基準が必要になるため、 一般的な説明が必要になる」 と釈明。 これが本会議答弁と同日の答弁に変更がないという役所の論理だ。 しかし、 一般の消費者には理解しがたい。 
 日本維新の会の片山大介氏は、 「なぜ文言を変えたのか。 これは同じことなのか」 とさらに追求。 これに対し、 福井消費者相は 「まず抽象的にいう。 年齢について、 若年者について入るのかということをきっちりいう。 中高年について関連で触れるという参議院型の答弁を基本としている」 と回答。 片山氏は 「回答になっていない。 今のが答弁になるのか」 と疑問を投げかけた。 一般消費者にも意味不明だ。

見解分かりやすく
委員会への提出求める
 同日、 野党筆頭理事の森本氏は、 「社会生活上の経験が乏しい」 要件について、 解釈等をわかりやすく整理して委員会に提出することを要請。 事業者側の参考人から真面目に取り組んでいる事業者にはこの要件がなくてもあまり関係がないという陳述があったことも引用し、 これで大きな混乱が生じていくようなことがあれば修正する、 あるいはこの文言が必要なのか、 今後の検討課題として残っているのではないかとただしている。 
 共産党の大門実紀史氏も、 この要件について、 「現場で事業者に消費者庁の見解をファックス 1 枚で送信できるよう私たちも努力すべき」 と述べ、 消費者庁に対し見解を整理し、 「高齢者であっても、 契約の目的となるものや勧誘の態様との関係で、 本要件に該当する場合がある」 などの基本的な枠組みだけを示したものを提出することを求めた。 全国消費生活相談員協会の増田悦子理事長が意見陳述で要望していた。

判断力「著しく」低下
過度に狭める運用不可
 大門氏は、 衆議院の修正で新たに追加された 「加齢または心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、 現在の生活の維持に抱いている過大な不安をあおられた場合」 の契約取消権について、 「著しい」 という表現が過度に適用を狭めるものであってはならないと指摘。 与野党修正案提案者の畑野君枝氏 (共産党) の答弁で、 「過度に厳格に解釈されてはならない。 軽度認知障害の場合も、 当該消費者に係る個別具体的な事情を踏まえて判断されるべきものである」 ことが提案者の総意であることを確認した。 さらにうつ病についても畑野氏から 「当該消費者に係る個別具体的な事情を踏まえて判断されるべきもの」 との回答を得た。

「うつ病も対象になり得る」
「2類型の追加で原案解釈変更ない」
 大門氏は、 法案審議前に消費者庁から提出された事例集にはうつ病の例や認知症の例 (囲み参照) も含まれていたとして、 「その通りでいいのか」 と消費者庁に確認。 衆議院の修正で新たに2つの取消権が追加されたが、 「これによって原案に規定されていた2つの取消権の解釈が変更されることはない」 (川口消費者庁次長) との答弁を引き出した。

だます行為問題にすべき
経験問う要件削除を
 初代消費者担当相を務めた福島みずほ氏 (希望の会) は、 痴漢の啓発が 「気を付けよう甘い言葉と暗い道」 から 「痴漢はあかん」 に替わったことを例に、 「だます行為そのものを問題にすべきで、 被害者自身を問題にする要件はおかしい」 と指摘した。 「子育ても PTA 活動もやって十分社会生活上の経験を積んだ主婦がだまされるのは、 落ち度があるということになるのではないか」 と削除を求めた。 
 消費者委員会消費者契約法専門調査会で検討された婚活サイトの契約者の平均年齢は 35.1歳で、 30 歳代から40 歳代の女性がターゲットになっているとして、 「救済できるのか」 と質問。 川口消費者庁次長は 「結婚の有無等の経験も考慮され得る。 一人暮らしで交友関係が希薄な場合なども、 社会生活上の経験が乏しい要件を満たす場合になり得る」 と回答。 福島氏は 「本要件を設けたとしても、 消費者委員会において検討されてきた被害事例は、 高齢者の被害事例含めて基本的に救済されることでいいか」 と福井消費者相に確認し、 「さようでございます」 との答弁を得た。 
 福島氏は 「社会生活上の経験が乏しいことは、 消費者被害にとってあまり意味がない」 と述べた。

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