日本消費経済新聞は、生活者優先時代を実現するため、消費者行政、消費者問題、企業の顧客対応の情報を全国に発信する専門紙です
 

2020/09/28

日本消費経済新聞2309号(2020年9月25日発行)

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ジャパンライフ破綻から2年半
山口元会長ら14人ようやく逮捕
 警視庁と愛知など6県警の合同捜査本部は9月 18 日、 販売預託商法を展開し約 2405 億円の負債総額を抱えて破綻した 「ジャパンライフ」 (東京、 破産手続き中) 元会長の山口隆祥容疑者 (78) ら 14 人を、 詐欺容疑で逮捕した。 東京地裁が破産手続き開始を決定 (2018 年3月1日) してから2年半かかった。 100 万円から 600 万円もする磁気治療器を販売額の6%でレンタルし、 6%のレンタル料を支払う利益を生まない事業。 かつ現物が極端に少ない現物まがい商法で、 なぜここまで被害が拡大したのか。 消費者庁元職員の天下りをはじめ複数の元官僚らが同社顧問に就任し、 特許を授与し、 「桜を見る会」 招待状など安倍晋三前首相をはじめ多くの政治家やマスコミ関係者が広告塔に利用されたことで、 顧客や社員を信用させた。 高齢女性を狙い老後の資産を身ぐるみはがすこれまでにない悪質で特殊な詐欺事件の全容解明が急がれる。 被害者からは 「資金の流れを解明し、 少しでもお金を返してほしい」 「山口会長は、 正直にすべてを話してほしい」 「安倍首相の退陣、 桜を見る会中止公表を待ったかのような逮捕で、 幕引きしようという疑念もあるが、 どのような理由で山口会長が桜を見る会に招待されたのかも明らかにしてほしい」 などの声が挙がっている。(相川優子)

被害者切実な訴え「資金の流れ解明を」
「少しでもお金返してほしい」
地方マネージャーも逮捕
8人のうち7人のみ
 他に逮捕されたのは、 山口容疑者の娘で元社長のひろみ (48) ▽元取締役の安田真二 (62) ▽同、 松下正已 (61)、 元国際部ゼネラルマネージャーの石渡勝祥 (30)、 元営業部お客様相談室長の須山博行 (57)、 元財務部課長代理の幾世橋毅 (44) ―の各容疑者ら。 8人いた地方マネージャーのうち7人も逮捕された (2面囲み参照)。 
 警視庁生活経済課による逮捕容疑は、 自転車操業に陥り、 配当金の支払いを継続できる見込みがないにもかかわらず、 元本を確実に返済するなどとうそをついて勧誘し、 12 人から合計 8006 万 5000 円をだまし取ったとしている。 
 逮捕された元取締役の2人は、 それぞれ事業部長、 総経理を務め、 同社が 2017 年 12 月 26 日、 2度の不渡りを出して銀行取引停止命令を受け、 事実上倒産したあとも、 全国各地で説明会を開催。 消費者庁の的外れの業務停止命令と思い込みの報道で資金繰りができなくなったが、 「倒産はしていない」 などと説明していた。 
 消費者庁から2度目の業務停止命令を受けて間もない 2017 年5月 16 日、 約 1000 人を集めた都内ホテル会場で、 磁気ベストや磁気バンドを装着する体験を披露。 前屈したときに床から爪先までの距離が、 装着して 30 秒で 30㎝が 18㎝という具合に短くなり、 2つの商品の体験後にはそれぞれ同様に24㎝分短くなった。 同社社員が 「体の血液の1回りが 30 秒。 体が柔らかくなったということは、 血流がよくなる。 細胞が活性化し、 身体の中でがん細胞と闘っている」 などと説明。 山口元会長は 「日本人は癌、 心筋梗塞、 脳障害で亡くなっているが、 すべて血行。 血液の流れをよくする。 血液をきれいにするのが、 ジャパンライフ」 と勧誘していた。 
 元国際部ゼネラルマネージャーは、 海外統括責任者。 同社本社ビル売却代金のうち1億 3000 万円が送金された人物だ。 破産管財人による提訴が行われ、 そのお金で購入されたマンションが売却され、 労働実態がないにもかかわらず給与を得ていた母親への不当利得返還請求訴訟と併せて和解が成立している。 
 元お客様相談室長は、 顧客やマスコミ対応を担い、 山口元会長と連名で弁護団を中傷するビラなどを作成して配布していた。 消費者庁取引対策課元課長補佐の天下り問題で、 本紙が情報開示請求をした結果、 「現職中に元課長補佐がジャパンライフトップに面談を求める決裁文書 (伺い書) を入手したが、 この決裁文書はジャパンライフ職員が元課長補佐から受けたストレスを解消するために偽造したと供述」 したことが明らかになった。 これら一連の対応をしたのもこの人物と見られる。 消費者庁の調査では天下りは認定できなかったが、 伺い書は2通あり、 内閣府再就職等監視委員会が独自の調査で天下りを認定。 同委は国会で 「消費者庁の調査で天下りを認定することは可能だった」 と答弁している。 
 元財務部課長代理については、 多くの被害者が 「解約を申し出るとすぐさま自宅にやってきて解約を阻止する役割を担っていた。 あの時解約できていればと、 いまだに悔しい」 と証言している。

月の売上1人で6億円超も
ノルマ達成できると奨励金
 ジャパンライフでは、 約 80 店舗の店長を、 2~3店舗ごとに統括するエリアマネージャーが 20 数人 (時期により若干異なる) 配置されていた。 その店長やエリアマネージャーの上で、 いくつかのエリアを統括していたのが地方マネージャーだ。 破綻当時、 8人の地方マネージャーが配置されていたと見られるが、 逮捕者は7人に留まっている。 
 山口元会長からノルマが課され、 頻繁にノルマが達成できるか電話が入っていたという。 ノルマが達成できると奨励金が出た。 山口元会長は、 約 1000 人を集めた都内ホテルの勧誘会場で、 「○○地方マネージャーは、 2018 年3月の売上が6億 3000 万円で、 △△地方マネージャーに 1000 万円負けた」 などと話し、 売上高を競わせていた。 
 南関東地方でも、 悪質な勧誘が行われていたというがこの地区を担当していた1人は逮捕されていない。 「日本国籍ではないと見られるが、 なぜ逮捕されないのか疑問」 「ある地方マネージャー代理は、 相当悪質な勧誘をして1年で家を新築した。 何を理由に逮捕の線引きがされたのか疑問」 「なぜ、14 人なのか。 納得がいかない」 などの声が関係者から聞かれた。

被害総額2100億円か
被害実態いまだに不明確
 警視庁生活経済課は、 約1万人から約 2100 億円を集めたと見ている。 
 消費者庁は、 同社に対し4回の業務停止命令を出しているが、 正確な被害実態は明らかになっていない。 2017 年8月 25 日付で公認会計事務所が同社役員に提出した報告書しか報道できる数字がない。 2017 年度3月末時点での数字で、 負債総額は約 2405 億円。 預かった商品として負債に計上すべき預託取引額は約 1843 億円とされている。 
 消費者庁は、 2回目の業務停止命令 (2017 年3月 16 日) 時に、 粉飾決算が分かっていたにもかかわらずこれを明らかにしないまま、 外部監査を受け顧客に通知する措置命令を出した。 同年5月末までの回答を求めていたが、 同社は顧客に 「3月に初の月間売上 30 億円を達成」 などと通知。 何度も指導をし 「監査意見は意見不表明」 の通知を経て、 ようやく出てきたのがこの報告書だ。 
 豊田商事事件の被害額は約 2000 億円。 これを上回れば、 安愚楽牧場 (被害額約 4700 億円) に次ぐ、 戦後2番目の大規模被害になる。 捜査権がある合同捜査本部には、 早急な被害実態、 隠し資産を含めたお金の流れの解明を求めたい。 
 消費者庁の4回の行政処分は異常。 4回も行わなければならないのは、 適正な処分が行えていなかったことの裏返しでもある。 遅い上に、 処分内容も疑問だらけだ。 最初の業務停止命令以降、 会場に人を集めた大規模勧誘 (訪問販売に該当) が継続されていたにもかかわらず、 なぜ、 警察が業務停止命令違反で動かなかったのかも疑問がある。 同社は、 訪問販売や連鎖販売取引、 預託取引で処分すると、 今度はモニター商法、 リース債権販売と取引形態を次々に変えて営業を続けたが、 取引の実態は変わっていない。 結局、 全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会が被害者による破産申し立てをするまで被害拡大を止めることはできなかった。 再三報道し、 国会でも何度も追及されている。

大口顧客名簿の最高額
2015年末で約12億円
 本紙が 2017 年当初に入手した高額契約者の名簿 (2015 年 11 月末時点) では、 最高契約金額は 12億 4780 万円。 1億円以上の契約者が 314 人掲載されていた。 5億円以上は 15 人、 この 15 人を含め3億円以上は 41 人、 2億円以上が 114 人に上っていた。 
 同社は1億円以上の契約している人をミリオネア会員と呼び、 表彰をし、 顧客にも名簿を配布してきた。 
 元社員は、 この名簿は本物で事実上倒産した 2017 年 12 月時点では、 最高額が 14 億円を超えていたと証言している。 高額契約者は割引があるため実質の契約額は7割程度と説明しているが、 その実態もいまだに明らかにされていない。

東京地裁、当初から自転車操業認定
破産管財人、2008年には粉飾決算
 東京地裁は 2019 年5月に、 同社の販売預託商法が始まった 2003 年 11 月当初から自転車操業であること、 2005 年以降入ってくるレンタル料が、 支払額を大幅に下回り、 その差額が 2014 年度で 60 億円、 2015 年度には 70 億円を超え、 破綻した 2017 年度では 10 分の1に過ぎなかったことを認定している。 
 同社破産管財人も、 自転車操業の状態が続いていたとして、 2017 年度後半にはレンタル収入は、 レンタルオーナーに支払うべき金額の 10 分の1しかなかったと報告している。 遅くても 2008 年以降は粉飾決算を行っていたとしていた。 
 山口元会長個人の破産管財人は、 破綻直前に銀行口座から引き出されたとする 5000 万円の使途不明金の調査を進めてきたが、 山口元会長が協力せず、 捜査権のない調査では、 ほとんど解明されていない。

安倍元首相や加藤官房長官も広告塔
「厳重に抗議」加藤官房長官
 ジャパンライフは、 多くの政治家や著名ジャーナリストなどを広告塔として利用し、 元官僚らを顧問とすることで、 顧客や社員を信用させてきた。 
 本紙が 2018 年1月、 元社員から入手した宣伝用資料には、 安倍元首相からの 「桜を見る会招待状」 のほか、 加藤勝信一億総活躍担当相 (当時) と山口元会長との会食、 山口元会長主催の二階俊博幹事長を囲む懇談会などが含まれていた。 懇談会の参加者メンバーには、 著名なジャーナリストや大手マスメディアの解説委員、 編集委員なども掲載され、 広告塔として利用されていた。 
 山口元会長が、 帝国ホテルの一室に、 著名な政治家をゲストに迎え、 著名ジャーナリストや大手マスコミ解説委員らと懇談会を開くミレニアムの会の事務局を務めていたことも明らかになっている。 「日常的に大物政治家と会ったという話をされ、 すっかり信用した」 と元社員は証言する。 「桜を見る会」 の招待状があることで契約を決断したと話す被害者も少なくない。 
  「桜を見る会」 招待状に付された 「60」 の数字が、 首相招待枠である可能性があるとして国会で野党が追及してきたが、 「招待者名簿は廃棄済み。 個人情報であることから回答を控える」 として、 明確な答弁は得られないままだ。 
 9月 18 日の会見で、 加藤官房長官は、 再調査をする考えがあるかを問う質問に 「毎年多数の招待者がおり、 名簿も保存されていない。 個々の招待者について今から改めて調べても、 確たることは申し上げることができない」 と再調査する考えはないと回答。 自らの顔写真が使われたことについては、 「マスコミ主催の会合に行ったが、 その中には山口会長が参加されている事実はなかった。 山口会長が現場におられたことに尽きる。 同社の広告的なものに使われたことに対しては、 厳重な抗議をしている」 と説明している。

元官僚顧問料6人で1.6億円
永谷元内閣府官房長1650万円
 ジャパンライフの顧問には、 天下りが認定された水庫孝夫・消費者庁取引対策課元課長補佐だけでなく、 元特許庁長官の中嶋誠氏、 元経企庁長官秘書官、 元通産大臣秘書の松尾篤氏、 内閣府国民生活局長も務めた元内閣府大臣官房長の永谷安賢氏、 元科学技術庁官僚の佐藤征夫氏のほか、 橘優・朝日新聞元政治部長らも名を連ねていた。 
 民事裁判の中でこれまでに、 松尾氏が 9060 万円、 橘氏が 3011 万 8482 円、 佐藤氏が 1780 万円、 水庫氏が 360 万円、 中嶋氏が 300 万円の顧問料を受け取っていたことが明らかにされていた。 関係者への取材で、 永谷氏の顧問料が3年間で 1650 万円だったことが判明した。 

生活切り詰める切実な被害者の声
「猛暑でふらつきサバ缶買った」
 東電の補償金 7000 万円を含む1億 3000 万円を契約してしまった老夫婦。 
 津波で家が流され補償金で建てたばかりの家に、 足しげく通ってきた社員は畑仕事を手伝い、 元内閣府国民生活局長が理事長を務める NPO が老人ホームや墓まで世話をすると勧められ、 社員を子どものように信頼して約 3600 万円の契約をしてしまった 60 歳代の夫婦。 
 マイナンバー制度で郵便局や銀行の預金は税金がかかると言われ、 定期預金を解約し保険も見直して 40 年働いてコツコツためた貯金と退職金約1億 2000 万円をつぎ込んでしまった 60 歳代の女性。 
 社員に車で買い物や通院の送迎をしてもらい、 夫の入院に付き添ってもらったことで次々に契約し、 最後は子どもが絶対に解約しないよう取引銀行にお願いしていた定期預金まで、 別の支店で通帳を紛失したとして再発行させて解約して契約させられ、 総額 6000 万円をつぎ込んでしまった 80 歳代の高齢女性―。 
 これまでに多くの被害者を取材してきた。 老後の資産のほとんどをつぎ込んでしまった被害者は、 節約を重ね、 いろいろなものを切り詰めながら暮らしている。 中には、 誘った人から責められ体調を崩し、 生活保護を受けている人もいる。 
  「肉や魚は食べられない。 今夏の猛暑でさすがにフラフラし、 サバ缶を買って食べた」 「スーパーの見切り品コーナーにまず行く。 コンビニは高くて行けない」 「もやしや豆腐、 納豆を買っている」 「年金だけでは食べていけないので、 パートをしている」 「庭に花を植えて1本 50 円で売りに行っている」 「新聞はとっていない。 携帯電話は解約した」 など、 日々の暮らしは厳しい。 「あのお金があったら」 「悠々自適の老後のはずだったのに」。 そんな言葉を多くの人が口にした。

逮捕されても「お金は駄目だべ」
「少しでもお金返してほしい」
 山口元会長らの逮捕について聞くと、 「逮捕されても、 お金は駄目だべ」 という回答が返ってきた。 「ほんの少しでもいいから、 お金を返してほしい」 というのが被害者の共通した思いだ。 
  「一歩進んだのはありがたいが、 生活は苦しいまま」 「社員よりも被害者を優先してお金を返してほしい」 「ずいぶん以前に事情聴取を受けたが、 それにしても逮捕が遅い」 「このタイミングの逮捕は、 臭いものにふたをしようとしているのではないか」 「政治家とのつながりをきちんと追及してほしい」 「桜を見る会の招待状を信用した。 なぜ、 山口元会長が招待されたのか明らかにしてほしい」 等の声が聞かれた。

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