日本消費経済新聞は、生活者優先時代を実現するため、消費者行政、消費者問題、企業の顧客対応の情報を全国に発信する専門紙です
 

2020/01/30

日本消費経済新聞2287号(2020年1月25日発行)

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ジャパンライフ問題を総括③
4回の業務停止命令でも
業務止められず
 1月 20 日から通常国会が開幕し、 野党は首相主催の 「桜を見る会」 を徹底追及する方針を示している。 首相枠で招待されたとされるジャパンライフ元山口隆祥会長が展開したレンタルオーナー商法は、 “破綻必至のスキーム”だったことが東京地裁で認定された。 消費者庁は 2015 年9月の立入検査でこの事実がほぼ把握できたにもかかわらず、 4回業務停止命令を出しても業務を止めることはできなかった。 破綻まで1年もの猶予を与えたことで資産は散逸し、 被害回復は困難な状況だ。 1回目の行政処分はあまりに時間がかかり過ぎ内容がない。 2回目の行政処分でも現物まがいや、 会社の経営状況が分かりにくく、 自ら粉飾決算を認定しなかったことで 338 億円もの赤字があることを通知させるのに処分後半年も要した。 明らかな業務停止命令違反があるにもかかわらず1年近くも放置し、 2回目から3回目までの行政処分の間に約 2000 人 120 億円の新規契約を許した。 4回目の行政処分は違反4事例が3回目と同一で、 無理やり2回に分けたものの結局業務の継続を止められなかった。 消費者庁の行政処分はあまりにお粗末。 加えて、 特定商取引法を改正していくら業務停止命令違反の罰則を引き上げても、 警察が動いて違反を認定しなければ“絵に描いた餅”に過ぎない。 いまだに元山口隆祥会長は逮捕されておらず警察の対応にも大きな疑問が残る。 登録制、 規制官庁への破産申立権の導入は、 被害の防止や被害回復には不可欠だ。(相川優子)

業務停止命令違反で警察動かず
罰則引き上げても“絵に描いた餅”
 消費者庁がジャパンライフに立入検査に入ったのは 2015 年9月 10 日。 これまでに、 立入検査から1回目の業務停止命令 (2016 年 12 月 16 日) までに1年3カ月も要したのは、 あまりに遅い▽違反認定事例が 2015 年1月~3月と2年近くも前と古いのはおかしい▽違反認定が特定商取引法の勧誘目的等不明示、 預託法の概要書面の交付義務違反等しかない▽ 「『腰痛も治る』 などと言って磁気の布団と枕のセットの購入を勧め」 と違反認定事例にあるにもかかわらず、 特定商取引法の不実告知も認定していない―など、 支離滅裂な内容だったことを指摘してきた。

行政処分の内規7カ月ルール
立入検査から公表までは3カ月
 本紙が入手した 2015 年当時の内部規定は、 着手から処分公表まで7カ月 (7カ月ルールと呼ばれる)。 調査着手後、 事前調査報告書作成まで3カ月、 立入検査資料の作成等立入検査まで1カ月、 立入検査後の分析・立入検査結果報告書作成・報告徴収等で2カ月、 認定書作成・幹部説明資料の作成・弁明の機会付与・処分・公表まで1カ月とされている。 立入検査から処分・公表までは 3 カ月だ。 
 幹部説明資料を作成した後、 審議官から次長と長官に報告され、 政務3役には行政処分の前日に報告されるのが一般的だが、 この事案については調査の段階で官邸に報告されたという情報がささやかれた。 消費者庁幹部に取材をしても回答は得られないままだ。 どの段階で政治レベルでの報告が誰に行われ、 どのように対応されたのかは、 明らかにされていないままだ。

338億円の赤字通知、2回目の行政処分から半年後
なぜ措置命令で外部監査
ジャパンライフ顧客に真逆の通知
 2回目の業務停止命令 (2017 年3月 16 日) では、 ようやく、 レンタルしているはずの商品が大幅に足りないことを認定したが、 20 数種ある商品のうち、 「ファイブピュアジュエール」 という磁気ネックレスのみ。 立入検査から1年半も経ってなぜすべての商品で確認ができていないのか。 消費者庁元取引対策課長の同社への天下りが公けにならず、 国会で追及されなければ1回目の処分のみで終わらせたのではないかという疑念は拭い去れないままだ。 
 もう一つ、 2014 年度の短期レンタルオーナー契約 (1年満期でいつでも解約可) 額が約 287 億 7000 万円あり、 本来は預かり金として負債額として記載しなければならないが、 全体の負債額が約 94.5億円と虚偽の記載をしていたことを違反認定している。 であれば、 48 億円としている純資産も、 虚偽ということになるが、 粉飾決算だと自ら明確にせず、 監査法人か公認会計士による外部監査を受け、 その内容をすべての預託者に文書で速やかに通知するよう命じた。 このことが、 さらに被害を拡大させた。

「在庫は大量に保有」
「税務署から指摘受けたことない」
  「創業以来、 毎年決済報告を 42 年間、 管轄税務署に提出して承認を受け、 何一つ指摘されたことはない」 ―。 ジャパンライフは3月 31 日付で、 山口隆祥会長、 山口ひろみ社長連名で、 行政処分の違反認定事実とは真逆の内容の文書を顧客に送付した。 
  「当社の生産体制は、 国内3工場、 海外2工場で生産し、 大量の在庫を保有している」 「中国青島工場では、 常時 100 人から 150 人の作業員が2交代で生産を行っている」 「3月の売上は、 29 日現在 28 億 6770 万円で、 2月以上 (29 億 2122 万円) の売上は確保できる」 と説明。 処分を受けた3つの取引は一切行っていないとも強調している。 
 消費者庁は措置命令で違反事実を預託者に通知することも求めており、 明らかに措置命令に反する。

「処分月の売上30億円達成」
「翌月過去最高、35億5849万円」
 5月9日には、 都内で 1000 人規模の国際大会を開催し大規模勧誘 (ホテルに呼び出しての勧誘は訪問販売に該当) を行ったことも報道してきたが、 その中で山口会長 (当時) は、 「3月の売上は悲願の 30 億円を達成」 「4月は 35 億 5000 万円」 と説明していた。 5月 13 日付けで送付されたのは、 「3月は初の月間売上 30 億円を達成」 「4月はさらに売り上げを更新」 などと記載された驚くべき文書だった。 一覧表には赤字で、 2月の売上 29 億 2122 万円、 3月 30 億 558 万円、 4月35 億 5849 万円と、 分かりやすく表示されていた。

「意見不表明」
高齢者理解できず
 消費者庁は、 2回目の行政処分後、 措置命令に従うようジャパンライフを指導してきたと見られるが、 5月 29 日付けで ジャパンライフが顧客に通知した監査結果は、 「公認会計士の監査意見は、 意見不表明」 という内容だった。 
  「意見不表明」 とは、 「財務諸表に対する意見ができないほど会計記録が不十分で信用できない」 という意味だが、 高齢女性が理解するのは困難だ。 
 消費者庁は7月 13 日付で、 各地の消費生活センターに意見不表明の監査結果通知 (一般には非公表で取扱注意とも記載) が出されているとして、 「読むようお答えいただけますと幸甚」 と記載した文書を出している。 
 本紙は 「これを読んで理解できるのであればだまされない」 という弁護士のコメントを掲載し、 違反を認定した虚偽記載がどのような意味を持ち、 何が問題なのか分かりやすく説明し、 悪質性を伝える必要があると指摘 (8月5日号) した。

措置命令から半年
338億円赤字、預託総額1843億円
 ジャパンライフがようやく 「2015 年度末時点での純資産額は約 266 億円の赤字」 という文書を送付したのは8月 28 日付。 「2016 年度末時点での純資産額は約 338 億円の赤字」 という文書を送付したのは 2017 年9月 11 日付だった。 措置命令を出してから半年もかかった。 
 社員の証言によると、 解約の恐れがある顧客にはわざと間違った住所に送ったり、 協力的な活動者にまとめて送るよう会社から指示をされたという。 読めない一番薄いモードでコピーして送付し、 消費者庁から再送付させられたとも証言している。 
 2016 年度末時点で顧客から預かっている預託商品の総額は約 1843 憶円になることも記載されているが、 いずれの文書も非公表だ。

なぜ自ら粉飾決算認定しない
あまりにお粗末な行政処分
 消費者庁はなぜ、 公認会計士を伴って立入検査をしながら、 粉飾決算を自ら認定しないのか。 1800 億円に近い甚大な消費者被害が発生することは、 立入検査後ほどなく把握できたのではないのか。 何に配慮し何を恐れてこのような対応しかできなかったのか疑問でしかない。 あまりにお粗末な行政処分といえる。 
 2度目の行政処分以降も、 ジャパンライフの社員から 「消費者庁の行政処分は的外れ」 「一度も配当金が止まったことはなく、 経営上の心配はまったくない」 「過去の話で今やっているものとは関係ない」 などと説明され、 多くの高齢者が契約をしてしまっている。

2回目から3回目の処分まで、新規契約2000人120億円
3回目、業務提供誘引販売取引で処分
処分時には「リース債権販売」に転換
 3回目の行政処分が行われたのは 2018 年 11 月 17 日。 業務停止命令中の業務は行っていないというジャパンライフの主張通り、 業務提供誘引販売取引の概要書面や契約書が整備されるのを待って、 338 億円の赤字であることを故意に告げなかったことなどを違反認定し、 業務提供誘因販売取引を1年間停止した。 
 100 万円から 600 万円の磁気治療器をレンタルし、 1年間に販売価格の6% (100 万円の場合は月額 5000 円) を 「レンタル料」 として配当する仕組みを、 自ら装着して体験し、 友人や知人、 家族に拡販する名目で、 「月額活動手当」 に変更して契約させてきた。 
 2回目の行政処分以降、 約 2000 人 120 億円の新規契約があったとジャパンライフが消費者庁に説明したことが明らかにされた。 
 しかし、 本紙はすでに 11 月1日時点で山口会長・社長連名で 「リース債権販売」 に転換したとする文書を入手していた。 取引形態ごとに処分するやり方では業務の継続を許してしまう。

1年近く業務停止命令違反放置
なぜ、警察は動かないのか
 2017 年5月には都内のホテルで約 1000 人を集め大規模勧誘を行った国際大会は訪問販売に該当する。 本紙は 2017 年2月の段階で、 契約書は月額活動費としているものの、 自宅を訪問しこれまでと同様の契約をさせた契約書を入手した。 
 新たに同社関係者から提供された勧誘資料からすると、 現実的には2回目の業務停止命令の後も長期間に渡り、 レンタル料の倍返し (初回だけ 100 万円購入した場合のレンタル料 5000 円が1万円になる)、 特別割引 (100 万円の価格自体を割り引く)、 ポイント付与 (ポイントを貯めると有名演歌歌手のディナーショーなどに参加できる) などとうたって、 レンタルオーナー商法と変わらない契約を従来通りのやり方で勧誘していたとみられる。

警察動かず罰則“絵に描いた餅”
いまだに山口元会長逮捕されず
 消費者庁はなぜ、 1年近くも業務停止命令違反を放置したのか。 国会では刑事告発をしたのかが再三追及され、 消費者担当相は捜査に支障がでるため告発したかどうか明らかにできないと答弁してきたが、 本紙の取材では、 告発をしても警察が動かなかったために明らかにできなかったと見られる。 
 特定商取引法では、 業務停止命令違反をした場合、 法人には3億円の罰金が科せられている。 2016 年改正 (2017 年 12 月1日施行) では、 個人でも 「3年以下の懲役か 300 万円以下の罰金または併科」 と懲役刑を2年から3年に引き上げて強化しているが、 警察が動かなければ“絵に描いた餅”でしかない。 
 なぜ、 警察は動かないのか。 「てるみくらぶ」 や 「はれのひ」 は早々に社長は逮捕されたが、 はるかに大きな消費者被害を出した山口隆祥元会長がいまだに逮捕されないのも疑問でしかない。

4回目の行政処分、違反4事例3回目と同一
「リース債権販売」手つかず
実は業務停止命令違反
 4回目の業務停止命令は 2017 年 12 月 15 日。 3回目に処分した業務提供誘引販売の中で、 マルチ商法が含まれていたとして、 連鎖販売取引で1年間の業務停止命令を出している。 
 もう一つは、 2回目の行政処分時に違反認定された虚偽記載を修正し、 適法な書類を備え置くことを併せて措置命令したが、 適法な書類を備え置く見込みがないと違反を認定した。 
 ただし、 違反4事例はすべて3回目の行政処分時に公表された違反事例と同一だ。 無理に2回に分けて、 連鎖販売取引と預託取引の業務停止を継続したが、 結局リース債権販売には手つかずだ。 
 契約者からすると、 会社側が、 レンタルオーナー商法 (預託取引) とマルチ商法 (連鎖販売取引) から、 モニター商法 (業務提供誘引販売取引)、 リース債権販売に変えたと説明しても、 「一度手元に商品が来るかどうかが変わったわった程度で、 実質にやっていることは何も変わらない」 と口をそろえる。 マルチ商法ではずっと業務停止命令違反が続いていたことが明らかにされた。 
 預託法の書類備置き義務違反は 2017 年7月に、 これまでとは別の公認会計士が合意手続報告書 (根拠を示すことができない仕訳を取り消し修正された報告書) を出した段階で、 適正な書類は 2019 年6月末になることを明らかにしていた。

マスコミの報道少なく、配当止まるまで相談もない
登録制、規制官庁の
破算申立権不可欠
 ジャパンライフの4回の業務停止命令のうち、 1回目を報道したのは本紙が把握できた限りでは、 共同と日経のみ。 2回目は日経、 朝日、 毎日、 読売、 産経、 共同、 時事、 FNN、 TBS のみだった。 被害者は高齢な女性がほとんどで、 テレビで放映されなければ周知は難しい。 
 3回目と4回目は大手マスコミのほとんどが報道しているが、 11 月中旬には解約の返金が滞り、 12 月初旬には配当の支払いが止まっている。 3回目以降の行政処分の時点で解約を申し出てもお金は戻っていない。 
 マスコミの報道がなぜ少なかったのか。 山口元会長が経費を負担して毎月帝国ホテルで開催していた、 政治家とマスコミ関係者との懇談会の影響が考えられなくもないが、 消費者庁の処分内容の分かりにくさ、 公表時の説明のまずさにも大きな問題があるといえる。

行政処分では相談増えず
解約金の遅れ、配当停止で相談急増
 加えて、 配当金が止まるまでは、 全国の消費生活センターなどにほとんど相談が寄せられないのも販売預託商法被害の大きな特徴だ。 国民生活センターが内閣府消費者委員会の依頼で、 1週間ごとの相談件数を分析している。 
 2016 年 12 月以降、 毎週2~4件程度の相談があるが、 1回目と2回目の行政処分の後1週間で、 10 件程度に増えたに過ぎない。 3回目の行政処分後の1週間は 20 件程度あるが、 同センターは 11 月中旬から解約の際の返金が遅れている相談が寄せられた影響だと分析している。 12 月初旬から毎月の配当金の支払いが遅れている相談が毎週 30 件程度寄せられ、 12 月 26 日の倒産報道後の2週間は 400 件前後の相談が集中している。 
 ジャパンライフが5月 19 日付で 「意見不表明」 の文書を顧客に送付し返送を求めた翌週の相談が 20 件を超えていた。 意見不表明や印鑑を押して返送することなどへの問い合わせがあった。 70 歳代 80 歳代が7割。 既払い額 1000 万円を超える相談が半数を超え、 5000 万円を超える相談が 14%を占めていた。 
 行政処分ではほとんど相談が増えず、 返金や配当金が遅れなければ被害が顕在化しない。 相談件数が増加したときには被害が甚大になっていることが鮮明になっている。 
 1回目の行政処分から破綻までに1年以上も猶予を与えたことで資産のほとんどが散逸してしまっていることも債権者集会で明確になっている。 
 被害を入口で防ぐための登録制の導入、 資産を散逸させないための規制官庁による破産申立権の導入は不可欠だ。

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