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消費者契約法改正 特設ページ
2018/06/17

消費者契約法改正 日本消費経済新聞 2234号(2018年6月15日号)掲載分

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消費者契約法成立
参議院で再修正ならず
要件解釈、国会へ事前提示要請
 衆議院で修正された改正消費者契約法が6月8日成立し、 6月 15 日に公布された。 参議院で再修正することはできなかった。 参議院消費者問題特別委員会は、 過大な不安をあおった場合、 恋愛感情など人間関係を乱用した場合の契約取消権に盛り込まれた 「社会生活上の経験が乏しい」 要件について、 相談員が現場で事業者にファックスして活用できるよう整理した解釈を事前に提出することを消費者庁に求めた。 参議院の審議では、 修正を撤回した衆議院本会議大臣答弁が、 維持されることが繰り返し確認された。 しかし、 「例えば、 霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、 勧誘の態様に特殊性があり、 通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、 一般的には本要件に該当する」 とした問題の衆院本会議答弁 (5月 11 日) は、 6月6日の参議院消費者特委でも、 再整理という名目で 「勧誘の態様に特殊性がある場合には、 取消権が認められやすくなる」 という答弁に後退した。 維持されるとした本会議答弁を反映したどのような解釈が消費者庁から参議院消費者特委に提示され、 了承されるのかが注目される。 改正法は、 来年6月 15 日から施行される。(相川優子)

修正撤回後の衆院本会議答弁
参院消費者特で、 またも後退
 6月6日、 参議院消費者問題特別委員会で、 野党筆頭理事を務める国民民主党の森本真治氏は、 衆議院本会議での答弁内容を審議の途中で突然変更して撤回した問題について、 「その間の審議時間をすべて無駄にしたわけで、 国会軽視という言葉では済まされない。 国会の権能を著しく毀損 (きそん) させる行為」 と厳しく批判。 福井照消費者担当相に対し、 「どのように責任を取るのか。 自らの処分をどう考えているのか」 と追及した。 
 これに対し、 福井消費者相は 「2度とかかる事態が生じないよう気を引き締めてしっかり職責を果たす」 との回答にとどめた。

勧誘の態様に特殊性ある場合
「取消権認められやすくなる」
 国民民主党の矢田わか子氏は、 「社会生活上の経験が乏しい」 要件の解釈が、 広範囲に高齢者を対象とする定義から、 審議の中で時系列的に狭められるような発言に変わっているとして、 大臣にその経過について明快な答弁を求めた。   これに対し、 福井消費者相は、 「それぞれの質問の内容に応じた回答」 としか答えず、 これまでの答弁をさらに再整理。 ① 「本要件は年齢によって定まるものではない」 ② 「若年者でない場合でも、 社会生活上の経験の積み重ねにおいてこれと同様に評価すべきものは本要件に該当する」 ③ 「勧誘の態様が悪質なものである場合などには、 消費者による取消権が認められやすくなる」 という趣旨だったと回答した。 しかし、 この③の回答は、 この時点で、 またしても衆議院本会議答弁から後退している。

衆院本会議大臣答弁
「高齢者でも一般的には該当」
 修正が撤回された衆院本会議大臣答弁は、 「例えば、 霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、 勧誘の態様に特殊性があり、 通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっ ても、 一般的には本要件に該当する」 だった。 同日、 答弁された③ 「勧誘の態様が悪質なものである場合などには、 消費者による取消権が認められやすくなる」 では、 明らかに後退している。 
 福井消費者相は 「衆院本会議答弁は維持されている」 と何度も繰り返すが、 相談現場から事業者にファックスする紙に、 本会議答弁通りに記載された場合と、 再整理後の文言が記載された場合では、 消費者や事業者の受け止めは大きく異なる。 
 ②については、 大臣答弁修正・撤回後に突然出てきた答弁で、 「社会生活上の経験の積み重ねにおいてこれと同視すべきものは本要件に該当する」 が 「同様に評価すべきもの」 と言葉が変更されただけだ。 本会議答弁を変更していないとしながら、 そのまますり替えられた答弁が参議院でも同様に繰り返されている。

実際の答弁
矛盾していないか
 立憲民主党の杉尾秀哉氏は、 「衆院本会議答弁をそっくりそのまま維持するのか」 と厳しく追及。 「答弁は維持している」 と回答した福井消費者相に対し、 本会議答弁の修正撤回後、 「契約の目的や勧誘の態様」 の関係について一度も答弁していないと反論。 「社会生活上の経験の積み重ねにおいて、 若年者と同視すべきもの」 という新たな条件を示し、 「社会生活上の経験の積み重ねが、 契約を締結するか否かの判断を適切に行うために必要な程度に至っていない消費者であれば、 年齢にかかわらず取り消し得る」 の 2 つのパターンでしか回答していないのは矛盾していないかと切り返した。 
 これに対し、 福井消費者相は、 答弁を4項目に再整理 (囲み参照) して回答した。 しかし、 契約の目的となるものや勧誘の態様に特殊性がある場合の答弁は 「社会生活上の経験が乏しいことから過大な不安をあおられる消費者が多いと考えられ、 取消権が認められやすくなる」 に置き換わっていた。 矢田氏への答弁と同じで、 「同視する」 も 「同様の評価」 に言葉が変わった。

「衆院本会議は確認的答弁」
「一般的な説明必要」消費者庁
 川口康裕消費者庁次長は、 「衆議院で確認的な答弁があるが、 基本的に一般的な説明があり、 特殊、 悪質ということになれば取り消しが認められやすくなることを前提に答弁している。 その答弁自体から答えが一律に導き出せるようなものかということについて質問があり、 一般的な定義、 具体例を示して、 それから、 若年者と同視、 同様に評価できるような場合の基準が必要になるため、 一般的な説明が必要になる」 と釈明。 これが本会議答弁と同日の答弁に変更がないという役所の論理だ。 しかし、 一般の消費者には理解しがたい。 
 日本維新の会の片山大介氏は、 「なぜ文言を変えたのか。 これは同じことなのか」 とさらに追求。 これに対し、 福井消費者相は 「まず抽象的にいう。 年齢について、 若年者について入るのかということをきっちりいう。 中高年について関連で触れるという参議院型の答弁を基本としている」 と回答。 片山氏は 「回答になっていない。 今のが答弁になるのか」 と疑問を投げかけた。 一般消費者にも意味不明だ。

見解分かりやすく
委員会への提出求める
 同日、 野党筆頭理事の森本氏は、 「社会生活上の経験が乏しい」 要件について、 解釈等をわかりやすく整理して委員会に提出することを要請。 事業者側の参考人から真面目に取り組んでいる事業者にはこの要件がなくてもあまり関係がないという陳述があったことも引用し、 これで大きな混乱が生じていくようなことがあれば修正する、 あるいはこの文言が必要なのか、 今後の検討課題として残っているのではないかとただしている。 
 共産党の大門実紀史氏も、 この要件について、 「現場で事業者に消費者庁の見解をファックス 1 枚で送信できるよう私たちも努力すべき」 と述べ、 消費者庁に対し見解を整理し、 「高齢者であっても、 契約の目的となるものや勧誘の態様との関係で、 本要件に該当する場合がある」 などの基本的な枠組みだけを示したものを提出することを求めた。 全国消費生活相談員協会の増田悦子理事長が意見陳述で要望していた。

判断力「著しく」低下
過度に狭める運用不可
 大門氏は、 衆議院の修正で新たに追加された 「加齢または心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、 現在の生活の維持に抱いている過大な不安をあおられた場合」 の契約取消権について、 「著しい」 という表現が過度に適用を狭めるものであってはならないと指摘。 与野党修正案提案者の畑野君枝氏 (共産党) の答弁で、 「過度に厳格に解釈されてはならない。 軽度認知障害の場合も、 当該消費者に係る個別具体的な事情を踏まえて判断されるべきものである」 ことが提案者の総意であることを確認した。 さらにうつ病についても畑野氏から 「当該消費者に係る個別具体的な事情を踏まえて判断されるべきもの」 との回答を得た。

「うつ病も対象になり得る」
「2類型の追加で原案解釈変更ない」
 大門氏は、 法案審議前に消費者庁から提出された事例集にはうつ病の例や認知症の例 (囲み参照) も含まれていたとして、 「その通りでいいのか」 と消費者庁に確認。 衆議院の修正で新たに2つの取消権が追加されたが、 「これによって原案に規定されていた2つの取消権の解釈が変更されることはない」 (川口消費者庁次長) との答弁を引き出した。

だます行為問題にすべき
経験問う要件削除を
 初代消費者担当相を務めた福島みずほ氏 (希望の会) は、 痴漢の啓発が 「気を付けよう甘い言葉と暗い道」 から 「痴漢はあかん」 に替わったことを例に、 「だます行為そのものを問題にすべきで、 被害者自身を問題にする要件はおかしい」 と指摘した。 「子育ても PTA 活動もやって十分社会生活上の経験を積んだ主婦がだまされるのは、 落ち度があるということになるのではないか」 と削除を求めた。 
 消費者委員会消費者契約法専門調査会で検討された婚活サイトの契約者の平均年齢は 35.1歳で、 30 歳代から40 歳代の女性がターゲットになっているとして、 「救済できるのか」 と質問。 川口消費者庁次長は 「結婚の有無等の経験も考慮され得る。 一人暮らしで交友関係が希薄な場合なども、 社会生活上の経験が乏しい要件を満たす場合になり得る」 と回答。 福島氏は 「本要件を設けたとしても、 消費者委員会において検討されてきた被害事例は、 高齢者の被害事例含めて基本的に救済されることでいいか」 と福井消費者相に確認し、 「さようでございます」 との答弁を得た。 
 福島氏は 「社会生活上の経験が乏しいことは、 消費者被害にとってあまり意味がない」 と述べた。

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2018/06/17

消費者契約法改正 日本消費経済新聞 2234号(2018年6月15日号)掲載分

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解説
消費者庁の論理
消費者目線からかい離
 衆議院本会議大臣答弁をここまで後退させ、 あくまで答弁は変更していないと言い張る消費者庁の役所の論理は、 消費者目線からかい離している。 
  「霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、 勧誘の態様に特殊性があり、 通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、 一般的には本要件に該当する」 という衆院本会議大臣答弁と、 「契約の目的となるものや勧誘の態様に特殊性がある場合には、 取り消し権が認められやすくなる」 という参議院消費者特委の答弁に変更がないなどと説明されても、 一般消費者には意味不明だ。 
 民法の成人年齢引き下げへの政策的対応を打ち出したかったことが、 「社会生活上の経験が乏しいことから」 の要件追加の主な要因との指摘が国会で出された。 そのために、 これほど解釈を広げてねじ込んだものを、 今度は参考人から 「相談現場で無用の議論が生じるおそれがあること等から、 解釈を明確にするべき」 という意見があったとして、 整理という名目で答弁内容を変更した。 
 参考人からは、 『社会生活上の経験が乏しいことから』 の要件が残っていれば、 広く適用を認める解釈をとっても、 無用な反論、 無用な争点が残る弊害があり削除すべきという趣旨で、 「解釈の明確」 など全く求めていないとの意見が出ている (6月4日の参議院参考人質疑提出資料)。 この要件が中高年の適用を制限することは間違いない。 消費者の視点で、 すべての法律や制度を見直すために創設された消費者庁の歯車は狂ってしまったのか。 
 国会審議の大半を費やしても、 解釈が明確にできず、 国会審議で多くの議員が削除の必要性を指摘した要件を、 国会で削除できなかったのは、 残念でならない。 消費者関連法では、 与野党を超えて全会一致で修正を重ねてきた経緯からすると、 今回、 与党の一部に強い反対があり、 与党修正案をのむか原案に戻すか迫ったのも異例だ。 
 今となっては、 参議院消費者特委が消費者庁に提出を求めた分かりやすい解釈は、 参院付帯決議に盛り込まれた内容に沿って、 一般人が理解できる衆議院本会議の答弁を維持した内容になることを期待するしかない。 
 実質的に現場で広く運用し、 混乱が生じた場合は要件削除を改めて国会に要請することが求められる。 また、 衆議院の修正で追加された 「判断力が著しく低下している」 の 「著しい」 は、 参議院の審議の中で、 過度に狭く運用しないことが与野党修正案提案者の総意として確認された。 このことを踏まえ、 現場で運用していくことが大切だ。 
 消費者委員会が付言して答申で求めた 「高齢者、 若年成人、 障害者等の知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、 事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合における取消権 (いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)」 の創設は、 改正消費者契約法衆参両院の付帯決議のほか、 成人年齢を 18 歳に引き下げる改正民法の付帯決議にも、 法成立2年以内に必要な措置を講ずることが盛り込まれた。 早急な実現を期待したい。 
 地方消費者行政への恒久的な財政支援策の検討 (改正消契法付帯決議)、 地方消費者行政への十分な予算措置 (改正民法付帯決議) が盛り込まれた意義は大きい。 実現に向けた実効性ある検討に早急に着手することが望まれる。(相川優子)

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2018/05/29

日本消費経済新聞2232号(2018年5月25日発行)

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消費者契約法改正案、衆院で修正
社会生活上の経験不足要件削除できず
 消費者契約法改正案は5月 23 日、 衆議院消費者問題特別委員会で与野党共同で修正案が提出され、 可決された。 野党は、 過大な不安をあおった場合、 恋愛感情などの人間関係を乱用した場合の契約取消権に追加された 「社会生活上の経験不足」 の要件削除を求めたが、 与党の一部に強硬な反対があり、 認知症高齢者や障害者等の過大な不安をあおった場合、 中高年を含む霊感商法等に対応する2項目を追加する修正にとどまった。 審議の途中で、 大臣自ら、 社会生活上の経験不足の解釈を示した衆院本会議答弁を修正すると発言。 委員会審議がストップした。 修正発言は撤回されたものの、 委員会での答弁内容は本会議とは異なったままだ。 このため、 デート商法や過大な不安をあおられた中高年への適用は非常に限定される危惧がさらに強くなった。 修正案は 24 日、 本会議で可決され、 衆議院を通過する。 参議院での精緻な検討とさらなる修正が求められる。(相川優子)

2類型の追加で補足
参議院でさらなる修正を
前代未聞、本会議答弁を修正
撤回後も答弁不明確
 前代未聞のことが起きた。 5月 21 日、 まさに修正で最大の論点となっている 「社会生活上の経験が乏しい」 要件の解釈部分の本会議答弁を、 福井照消費者相自らが翻し、 修正すると発言。 「聞いていない」 「止め止め」 「速記止めて」 など怒号が飛び交い、 その日の審議は打ち切りになった。 
 審議が途中で打ち切られ散会になるのは、 2009 年に消費者庁創設を議論するために消費者問題特別委員会が設置されて以来、 初めてのことだ。 
 衆院本会議 (5月 11 日) の大臣答弁。 「例えば、 霊感商法等の悪徳事業者による消費者被害については、 勧誘の態様に特殊性があり、 通常の社会生活上の経験を積んできた消費者であっても、 一般的には本要件に該当する」 としていた部分を、 削除するという内容。 
  「社会生活上の経験が乏しい」 要件に該当するのは、 「若年者」 とし、 「若年者でない場合でも、 民法により救済される」 に改めると発言した。 
 質問に立った無所属の会の黒岩宇洋氏 (無所属の会) が、 消費者庁の職員が同日昼ごろ、 5月 11 日本会議の大臣答弁を修正する内容の紙を持ってきたと報告。 その内容を確認する質問に福井消費者相が答え、 本会議答弁を修正すると発言した。

「若者以外は該当しない」
「引きこもり、対象になりうる」
 5月 21 日の大臣答弁は、 この発言の前に、 すでに、 これまで (5月 11 日、 5月 17 日) とはガラッと変わっていた。 同日の立憲民主党の尾辻かな子氏への答弁は、 「霊感商法の被害者となった消費者でも、 その者が若年者でない場合には、 一般的には本要件に該当しないと考えられる」 「しかし、 就労経験がなく、 自宅に引きこもり、 他者との交流がほとんどないなど、 社会生活上の経験が乏しいと認められる者について は本要件に該当し得る」 というもの。 
 引きこもりや社会とほとんど交流がない人しか、 社会生活上の経験が乏しい要件に該当しないのでは、 中高年者が対象になることはほとんどない。 
 さらにデート商法の適用範囲についても 「中高年においては必ずしも、 事業者の行為により類型的に困惑する消費者とは言えない」 と福井消費者相は答弁。 
 尾辻氏は、 「30 歳代以上は救えないということか。 5月 11 日、 5月 17 日の答弁とも異なる」 と激怒。 「本会議答弁を撤回することなどありえない」 と驚きあきれる一幕があった。 デート商法については、 17 日答弁では 「特に結婚等の人間 関係形成に係る経験というのを考慮するということが考えられる」 と答弁していた。 
 社会生活上の経験が乏しい要件を入れた理由についても、 「社会生活上の経験が乏しいという要件は、 主として若年者層を消費者契約による被害から保護することを念頭に、 主として若年者層を念頭に保護すべき対象者の属性として規定した」 と答弁。 本会議での答弁 「被害事例を適切に捉えるために、 経験の有無という客観的な要素により、 要件の該当性の判断が可能となるよう法制化した」 とは、 大きく変わっていた。

立法府欺く行為
国会審議覆す
 大臣の本会議答弁修正発言で審議がストップし、 大臣がこれを撤回することで 23 日午後5時 45 分から3時間の審議で採決することが決まった。
 23 日夜、 3度目の質問に立った尾辻氏は、 「立法府を欺く行為」 と糾弾。 「本会議答弁を聞いて委員会で質問してきた。 今までの質疑が全部パーになっている」 と憤慨し、 「許されない行為」 と述べた。 
 共産党の畑野君枝氏は、 「法案の審議入りの本会議答弁で示した政府の条文解釈を、 委員会審議の最終段階になって一方的に変更することなど前代未聞」 と指摘。 「撤回で済まされる問題ではない」 と国会審議を覆す重大行為と認識して反省することを求めた。 さらに、 本会議答弁の内容を1つずつ確認し、 本会議での答弁が維持されていることを確認した。

「国会を冒とく」福井大臣
修正撤回後も、本会議と答弁異なる
 これに対し、 福井消費者相は、 「国会に対する冒とく」 と答えて、 陳謝した。 ただし、 同日の委員会での答弁は、 本会議の答弁とは異なったままだ。 尾辻氏は、 「変わっていない。 本会議答弁を維持するなら変わるはず。 こんなぐちゃぐちゃのままでいいのか。 もう1回整理して審議をやり直した方がいいのではないか」 と声を荒げる場面が何度もあった。 
 この日の大臣答弁は 「若年者でない場合であっても、 就労経験等がなく、 外出することも めったになく、 そして他者との交流がほとんどないなど、 社会生活上の経験が乏しいと認められる者については、 本要件に該当し得る。 これは例示で、 ほかの例も排除しない」。 デート商法については 「年齢で制限するわけではない」 にとどまっている。 「消費者が若年者で ない場合であっても、 社会生活上の経験の積み重ねにおいて、 これと同視すべきものは本要件に該当し得るということで整理した」 という内容だ。 
 付帯決議には、 本会議の大臣答弁を踏まえて、 「年齢にかかわらず、 社会生活上の経験が乏しい場合があることを明確にする」 ことが盛り込まれたが、 答弁は不明確なまま。 行政府が立法府に法案を提出し、 本会議で説明されたときとは、 「社会生活上の経験が乏しい」 要件を適用する政府の解釈はかなり狭くなっている。 デート商法や、 不安をあおられた場合の中高年者はほとんど対象にならない懸念も出ている。 新たに追加された、 2つの取消権の要件もあまりに厳格だ。 (詳細は解説)

施行後2年以内につけ込み型取消権
地方、恒常的財政支援策を検討
 付帯決議には、 平均的損害の推定規定創設等立証責任の負担軽減、 消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して勧誘して契約させた場合の取消権創設を検討し、 施行後 2 年以内に必要な措置を講じることを盛り込んだ。 地方消費者行政の体制の充実・強化のための、 恒常的な財政支援策を検討することも盛り込まれた。

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2018/05/29

日本消費経済新聞2232号(2018年5月25日発行)

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解説
「ちゃぶ台返し」
要件削除は不可欠
 行政府が立法府に提案した法律の解釈が、 国会審議の最終段階で変更された。 しかも、 法案修正の論点になっている 「社会生活上の経験が乏しい」 適用範囲の解釈部分だ。 
 重要法案は本会議で趣旨説明、 代表質問が行われるが、 その時の大臣答弁をひっくり返すなど前代未聞だ。 本会議での答弁に基づいて、 国会議員が質疑をし、 修正案を提起しても、 その前提になる解釈がころころ変えられるのでは、 国会は行政府を信用できないということになる。 まさに 「ちゃぶ台返し」 だ。 
 そもそも、 消費者委員会の答申にない 「社会生活上の経験が乏しい」 という要件を、 拡大解釈をしてねじ込み、 修正やむなしという状況に追い込まれると、 引きこもり状態の人しか適用できないような限定的な解釈を示す。 最終的には裁判所が判断するとはいえ、 消費者庁がやることなのか。 
 大臣答弁の修正は撤回したというが、 その後の委員会答弁は、 本会議と同様の答弁には戻っていない。 霊感商法は例示にしか過ぎなかったはずだが、 適用範囲が国会審議を経てさらに不明確になっている。 そもそも、 元凶は 「社会生活上の経験が乏しい」 という要件を入れたことにある。 結論は1つ、 この要件は削除すればいいだけだ。 
 さらに、 新たに追加された2つの取消権も、 要件が厳格すぎないか。 野党修正案を与党は飲まず、 与党が提出した与党修正案を、 野党が付帯決議を盛り込むことで許容した経緯がある。 
 なぜ、 霊感商法だけが切り出されたのか。 特別な能力によって重大な不利益が生じると言われるだけで、 人は正常な判断はできなくなる。 なぜ 「確実に」 重大な不利益を回避することができる旨を告げられる必要があるのか。 
 加齢や心身の故障により 「判断力が著しく低下」 した人の不安をあおった場合の取消権は、 「著しく」 を規定することで、 最も救済する必要がある 「認知症と正常な人の中間にいる人」 (MCI と呼び、 2012 年度で認知症高齢者が約 462 万人、 MCI が約 400 万人いるとされている) がこぼれ落ちることはないのか。 進学、 就職、 結婚、 容姿、 体型は対象になっていないが、 中高年はこれらの要件をすべて外す必要があるのか。 
 さらに、 デート商法には、 何ら中高年への対応がされていない。 相談件数は 20 代が半数程度を占めるが、 逆にそれ以外の年代の人が半数近く相談しているともいえる。 60 歳代、 70 歳代、 80 歳でも一定の相談がある。 恋愛感情等の人間関係を乱用した場合の取消権も、 過大な不安をあおった場合の取消権も、 元々報告書に規定された要件だけで十分にハードルが高く、 そもそも、 社会生活上の経験不足の要件など必要ない。

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2018/05/29

日本消費経済新聞2232号(2018年5月25日発行)

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衆院消費者特 参考人意見陳述から
社会生活上経験不足の要件削除を
河上正二・前消費者委員会委員長
 衆議院消費者問題特別委員会は5月 15 日、 参考人の意見陳述を求めた。 消費者契約法改正に向け答申をまとめた内閣府消費者委員会前委員長の河上正二氏は、 「社会生活上の経験が乏しい」 の要件を削除した上で、 「消費者の知識、 経験、 判断力等の不足を不当に利用して、 過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合」 の取消権をきちんと規定することが今回の改正の最重要課題と述べた。 消費者契約法は、 民法などに次いで適用範囲が広い包括的な性質を持った特別法で、 トラブル解決ための公正な基準を提供する役割を持つと解説。 行政規制的な法律のように要件を個別に厳格化する作業にこだわると、 消費者契約法そのものの機能を失ってしまう可能性があると指摘した。 立法担当者にも十分理解されていなかったのではないかと苦言を呈した。

立法論としては「不適切」
つけ込み型取消権受け皿規定必要
 改正法案は、 消費者の知識、 経験、 理解力、 判断力などの不足につけ込む勧誘への包括的な救済を求める 「受け皿規定」 が欠けているという難点があると河上氏。 
 今回追加が予定されている不安をあおる告知、 恋愛感情等の人間関係を濫用した場合の取消権は、 一歩前進とはいえるが、 「社会生活上の経験が乏しいことから」 という新しい要件が加えられ絞り込みが行われている。 このために、 逆に保護の対象が狭まり、 特に高齢者や障害者の被害救済の妨げになる危惧がぬぐえないと問題視した。 
 文理解釈からすれば、 やはりこれは、 若年成人を中心に意識してつくり上げられた規定。 一部で説明されている解釈による拡張は可能かもしれないが、 最初から柔軟な拡張解釈に期待して不必要な要件を加えることは、 「立法論としては不適切」 との見解を示した。 
 消費者の不安な心理・依存心・興奮状態・急迫・無知・無経験など、 いわゆる理性的な判断ができない状況につけ込んで不当な利益を追求する悪質な事業者の行為は、 民法上の 「暴利行為」 と評されてもおかしくない。 個別の立証が容易でないことを考えれば、 「消費者契約法で取消権を付与して、 契約的な拘束から離脱する可能性を認めておくことがぜひとも必要」 と述べた。  ヨーロッパでは、 1980 年代に、 こうした状況の濫用に対する規定は入っている。 日本の消費者保護がここまで遅れてきたのは、 やはりモグラたたきのようなことをして、 なかなか一般的な理念がそこに書き込まれなかったからではないかとの考えを示した。 
 それが難しい、 現時点でどうしても無理だということであったとしても、 せめて、 「社会生活上の経験の乏しさまたは判断力の不足若しくは低下により」 というような言葉を補完することで、 少しでもこぼれていくものを救っておくということが望ましいと話した。

平均的損害の推定規定後退
約款の事前開示へ対応必要
 平均的損害の立証責任への推定規定が、 法案では完全に後退した点も問題だと指摘した。 消費者が 「事業の内容が類似する同種の事業者に生ずべき平均的な損害の額」 を立証した場合には、 その額が 「当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」 と推定する規定を盛り込むことを答申は求めていたが、 法案には盛り込まれていない。 
 河上氏は、 医療訴訟では、 原告が立証することがほとんど不可能なために、 裁判所でも事実上の立証責任を転換する解釈が行われていることを例に挙げた。 平均的損害に関するデータは全て事業者が持っていることから、 立証責任の所在そのものを考え直すことが必要と話した。 このほか、 約款の事前開示でも問題があると話した。 
 既に成立した改正民法の 「表示型」 約款に関する規定は、 相手方から事前・事後の開示請求がない限り、 約款によると表示さえしておけば、 約款が契約内容とみなされると読めなくもない規定が入った。 
 事業者は合理的な方法で、 消費者が契約締結前に契約条項 (民法定型約款を含む) をあらかじめ認識できるよう努めなければならないという努力義務規定を、 条文として、 遅くとも改正民法施行までに設けておくことを求めた。 
 どんな開示の仕方をしたらいいかわからないなどという事業者もあるが、 「自分が提示しようとしている契約内容を相手に知らせる努力自体を拒絶 するというのは、 私には信じがたい」 と述べた。

社会生活上経験不足の要件「不要」
野々山宏・京都消費者ネット理事長
 京都消費者契約ネットワーク理事長で、 弁護士でもある野々山宏氏は、 「社会生活上の経験が乏しい」 要件は、 消費者委員会の報告書になかったもので 「不要」 と述べ、 削除することを求めた。 元々報告書に盛り込まれていた要件だけでも、 十分に明確でハードルが高く、 これらの要件を満たした事業者は、 「十分に悪質」 との見解を示した。 消費者契約法改正法案には余計なものが1つ (社会生活上の経験不足の要件)、 足りないものが2つあると指摘。 足りないものには、 「平均的損害の推定規定」 と 「高齢者などの判断力の不足につけ込む勧誘方法への取消権」 を挙げた。 超高齢社会では、 判断力不足などにつけ込む状況乱用型の取消権が一番重要と話した。

他の要件ハードル高い
それだけで十分に悪質
 野々山氏は、 法案で新たに追加される2つの取消権の要件をわかりやすく解説した。 
 過大な不安をあおられた場合の契約取消権が適用される要件は、 ①消費者が 「過大な不安」 (一般的な消費者に比べて深刻な不安) を抱いている②勧誘者がそれを知っていて不安をあおる③実績や科学的根拠の裏付けなど根拠のないことを言って、 その願望の実現に必要だと言う―。 これらの要件を満たす必要があり、 それ自体で 「十分に悪質」。 「社会生活上の経験が乏しい」 という要件を追加して、 このような勧誘をする事業者を救済する必要がどこにあるのかと問いかけ、 削除を求めた。 
 恋愛感情など人間関係を乱用した場合の契約取消権が適用される要件は、 ①消費者が勧誘者に恋愛感情などの好意を抱いている②相手も自分と同じように好意を抱いていると誤信する③勧誘者は自分は好きではないが、 相手が好きだと思っていることに乗じて、 契約をしなかったら関係が破綻すると告げる―。 野々山氏は、 こういう商法はそれ自体で 「十分に悪質」 で、 弊害のある社会生活上の経験不足の要件を不意打ち的に追加するのは問題で、 削除すべきとの考えを示した。

判断するのは裁判所
最高裁が異なる判断
 政府が、 解釈で対応すると説明している点についても、 「消費者契約法の最終的な 解釈権者が裁判所であることから、 解釈で対応するのは限界がある」 との考えを示した。 京都消費者契約ネットワークが起こした裁判 (クロレラチラシ配布事件) で、 最高裁は、 消費者庁の解釈の本 「逐条解説」 とは異なる判断をしたことを例に挙げた。

予見可能性の確保は重要
長谷川雅巳・経団連経済基盤本部副本部長
 日本経済団体連合会経済基盤本部副本部長の長谷川雅巳氏は、 規制の範囲が適切に設定され、 内容が明確であることが必要で、 予見可能性が確保されていなければ、 保守的に解釈してしまい経済活動の委縮を招くことが懸念されると述べた。 消費者契約法改正法案は、 内閣府消費者委員会の答申に沿った、 極めて適切な内容との見解を示した。

参考人質疑から
要件削除して委縮する事業あるか
「分からない」長谷川氏
「想像がつかない」河上氏
「考えられない」野々山氏
 立憲民主党の森山浩行氏は、 「社会生活上の経験が乏しい」 要件がなければ委縮する事業があるかと質問。 長谷川氏は 「よくわからないところがある」、 河上氏は 「想像がつかない」、 野々山氏は 「考えられない」 と回答した。 
 国民民主党の柚木道義氏は、 つけ込み型勧誘の検討措置を設けた野党修正案を盛り込んだ形で改正することがこの間の流れに資するのではと、 河上氏の見解を求めた。 これに対し、 河上氏は、 「つけ込み型勧誘の受け皿になる取消権は、 検討せよではなく、 改正を実現してほしいと申し上げている」 と、 改正の実現を強く求めた。 
 自民党の勝俣孝明氏は、 取消権の要件の規定について、 合理性の観点からどう判断して合意したかを質問。 これに対し、 長谷川氏は、 「予見可能性を確保して、 事業活動が委縮しないような形でお願いしてきた。 法律の文言と報告書の文言は必ずしも一致していないが、 こういった文言であれば事案に適切に対応しながら、 かつ、 事業活動の委縮を生じさせないもの評価していた」 と回答。 
 河上氏は 「委員会の中で、 具体的な要件となる立法事実がどこにあるかしきりに問われた。 立法事実に即して規制をすると、 相手も自分が好きだと思うと誤信しというような、 恋愛をしたことがないのかと思われるような、 妙な要件を固めることになる。 相手に恋愛感情をもってしまったら、 相手の言いなりになってしまうわけで、 本来救わなくてはならない人を外してしまう可能性がある」 と、 現状の要件の立て方に課題があるとの見解を示した。

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2018/03/16

日本消費経済新聞2224号(2018年2月25日発行)

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消費者契約法改正案条文を入手
2つの取消権要件に「社会経験不足」
 今国会に提出される 「消費者契約法改正案」 条文を入手した(6面に掲載)。 
 消費者の 「過大」 な不安や、 恋愛感情など人間関係につけ込んだ場合の契約取消権に、 消費者委員会の答申には含まれていなかった 「社会生活上の経験が乏しいことから」 の要件が追加された。 自民党消費者問題調査会で明らかにされた骨子案通りの内容だ。 日本弁護士連合会は2月 22 日、 「社会生活上の経験が乏しい」 とする要件の削除を求める会長声明を出している。 
 改正条文では、 消費者が社会生活上の経験が乏しいことから 「進学、 就職、 生活、 生計その他の社会生活上の重要な事項」 「容姿、 体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項」 に対する願望の実現に、 「過大」 な不安があることを知りながら、 契約が願望の実現に必要であると告げた場合は、 契約の取り消しができるとしている。 
 他の人より劣等感を抱くなど 「過大」 な不安に要件が厳格化され、 条文でも 「裏付けとなる合理的な根拠がある場合」 などの要件を盛り込んでいる。 
 恋愛感情などの人間関係を乱用した場合の取消権は、 従来からある人間関係につけ込む場合も対象にしたが、 両思いであると誤信した場合に限定されている。 3月2日、 閣議決定予定。

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2018/03/16

日本消費経済新聞2224号(2018年2月25日発行)

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消費者契約法改正法案
つけ込み型取消権
「社会経験不足」削除を
 日本弁護士連合会は 2 月 22 日、 中本和洋会長名で、 消費者契約法改正案骨子に対し、 修正を求める声明を出した。 消費者が抱いている不安や、 勧誘者に恋愛感情等を抱いていることにつけ込んだ勧誘を理由とする取消権の要件に追加された 「社会生活上の経験が乏しいこと」 の文言を削除することを求めている。 少なくとも、 高齢者が取消権の対象から除外されないことを解釈で明確にすべきとしている。

日弁連が会長声明
「平均的損害額」推定規定導入を
 理由には、 高齢者に対する霊感商法などが除外される解釈がされると、 消費者委員会の答申(2017 年8月)の趣旨を大きく逸脱することを挙げている。 
 今回の消費者契約法改正は、 「高齢化の進展への対応が重要な課題の一つ」 と指摘。 消費者委員会消費者契約法専門調査会では、 「若年者に限らず高齢者など年齢に関係なく、 消費者の不安や人間関係等につけ込んだ不当な勧誘による被害の救済を念頭に議論されてきた」 と説明している。 このほか、 事業者の 「平均的な損害の額」 について、 消費者の立証責任を軽減するための推定規定の導入を求めている。 消費者委員会の答申には盛り込まれていたが、 改正法案では落ちている。 立証責任は消費者側が負うとする最高裁判決を前提としつつ、 立証のために必要な資料を事業者側が保有していることを踏まえて答申が提案したもので、 必要不可欠としている。 さらに、 「高齢者や若年者等に対して年齢等による判断力不足に乗じて過大な不利益をもたらす契約をさせる、 つけ込み型勧誘行為に対する取消権」 の早急な立法も必要としている。 消費者委員会が答申で、 検討を求めることを付言し、 日弁連も導入を強く求めてきた。

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2018/03/16

日本消費経済新聞2223号(2018年2月15日発行)

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消費者契約法改正案骨子
不安あおる取消権の要件
「社会的経験不足」を追加
 今国会に提出される 「消費者契約法改正案」 の骨子が2月2日、 分かった。 消費者委員会専門調査会報告書で新たに追加するとされた①不安があることを知りながらあおる告知をして契約させた場合②恋愛感情などの人間関係につけ込んで契約させた場合の契約取消権に、 「社会生活上の経験不足」 の要件が追加された。 消費者庁は、 年齢で制限しているわけではないと説明するが、 どこまで適用されるか不明確だ。 高齢者をはじめ若年者以外の救済が極めて限定的になることを懸念する意見が出ている。 ①の不安をあおる告知をした場合の契約取消権では、 事業者が知っているべき不安は、 他の人より著しい劣等感を抱いているなど 「過大な不安」 に、 要件がさらに厳格化されている。 ②の恋愛感情などの人間関係を乱用した場合の取消権は、 従来からある人間関係につけ込む場合も対象にしたが、 両思いであると誤信した場合に限定した。 立証が非常に困難との指摘が出ている。 好意を抱き嫌われないために契約してしまった場合は対象から外れる。 適正な事業者のキャンセル料を、 類似する同種の事業者の平均的損害額から推定できる規定が落ちている。 2月末に閣議決定される。(相川優子)

「過大な」不安
事業者知っていた場合が対象
 同日、 非公開で行われた自民党消費者問題調査会 (船田元会長) で、 明らかにされた。 
 契約を取り消しうる不当な勧誘行為に追加する項目として、 「社会生活上の経験不足を不当に利用」 した場合の2つの取消権が提起されている。 
  「不安をあおる告知」 については、 ①社会生活上の経験が乏しく②願望の実現に過大な不安がある消費者に対し、 「過大な不安」 があることを知りながら、 契約が願望の実現に必要であると告げた場合の契約取り消しが可能としている。 
 専門調査会報告書を踏まえた意見募集案は、 「消費者の不安を知りながら、 損害等を回避するために、 必要だと正当な理由なく強調して告げる」 とされていた。 「社会生活上の経験が乏しい」 ことが要件に追加された。 「強調して」 は削除されたが、 「不安」 が 「過大な不安」 に厳格化されている。 
  「社会生活上の重要な事項又は身体の特徴・状況に関する重要な事項に対する」 願望の実現に過大な不安がある場合が対象で、 「重要な事項」 として、 進学や就職、 結婚、 病気で長期に療養した場合などを具体的に条文に書き込む方向で調整が進んでいる。 
 例えば、 就活中の学生に、 過大な不安があることを知りつつ、 「あなたは一生成功しない」 と告げ、 就職セミナーに加入した場合は、 契約を取り消すことができる。 ただし、 「過大な不安」 とは、 人より自分が著しく劣っていると思い込んでいることなどが必要で、 アンケートを受けて事業者から指摘されたなど、 立証が求められる。
  「夫が死んだのはあなたのせい」 「徐霊しなければ、 家族全員ダメになる」 などと不安をあおる霊感商法、 「肌年齢が実年齢より 10 歳上」 などと言われて契約してしまったエステのトラブルなども想定されていたが、 30 代、40 代を含めどこまで適用されるか不明確だ。 
 霊感商法や親切商法などにつけ込まれた高齢者が置き去りにされる解釈になりかねないとして、 「社会生活上の経験が乏しい」 とする要件の削除を求める意見も出ている。

判断力不足につけ込む取消権
消費者委の答申に対応せず
 超高齢社会に突入し、 高齢者の 「金、 健康、 孤独」 の3K と呼ばれる不安をあおり、 判断力不足につけ込んで契約させる悪質商法は後を絶たない。 2014 年8月に首相から諮問された内容は、 「情報通信技術の発展や高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化への対応等の観点」 からの見直しだったはずだ。 消費者委員会の答申では、 消費者契約法専門調査会の報告書とは別に、 「高齢者や若年成人、 障害者等の知識・経験・判断力の不足を不当に利用し、 過大な不利益をもたらす契約の勧誘が行われた場合の取消権」 導入などを、 特に早急に検討すべき喫緊の課題として付言したが、 骨子には盛り込まれていない。

デート商法の契約取消
「両思い」と誤信した場合対象
  「恋愛感情など、 人間関係を乱用」 した場合の契約取消権は、 ①社会生活上の経験が乏しく②勧誘者に恋愛感情等を抱き 「両思いであると誤信」 した場合に、 事業者がこれを知りながら契約しなければ関係が破綻する旨を告げた場合が対象―と説明されている。 
 意見募集案は、 「勧誘に応じさせる目的で、 密接な関係を新たに築き、 契約しなければ関係が維持できないと告げる」 場合とされていた。 「新たに」 は削除され、 従来からの人間関係につけ込んだ場合も対象だが、 勧誘者が 「同様の感情を抱いていると誤信していた」 という厳しい要件が追加されている。 
 両思いであることは、 直接好きだと言われていなくても、 そのような素振りを見せている場合も対象になると消費者庁は説明しているが、 お互いがやり取りをしたメールなど客観的証拠による立証が求められる。 悪質事業者は証拠を残さないように対応するため、 「立証は非常に困難」 との指摘が出ている。 
  「男性から電話があり、 何度か電話をしているうちに好きになった。 男性に誘われ宝石展示場に行ったところ、 『買ってくれないと関係を続けられない』 といわれ契約した」 場合が、 適用対象事例に挙がっている。 
 30 歳代や 40 歳代でも、 デート商法で投資用マンションを購入させれた場合に、 過去に大きな買い物の経験がない場合などは対象になると考えられるが、 どこまで適用されるのか不明確だ。 
  「恋愛感情その他の好意の感情」 を抱いている場合が対象で、 先輩や後輩、 上司や部下などの人間関係も対象だが、 「通常の友人関係ではなく恋愛感情と同程度の親密な場合が対象」 と消費者庁は説明している。 マルチ商法は若者をはじめ、 地域コミュニティーで中高年にも広がっているが、 通常の友人や知人の場合は、 適用は困難と考えられる。 人間関係の乱用にまで、 社会生活上の経験不足を問う必要があるのかとの意見も出ている。

契約前に、契約内容を実施
「原状回復が著しく困難」
 このほか、 意見募集案に盛り込まれていた契約締結前に、 消費者に心理的な負担を抱かせた場合の取消権2つも導入される。 
 竿だけ売りが、 契約をする前に、 消費者宅の物干し台の寸法に合わせて竿だけを切ってしまった場合などを想定している。 「契約前に契約の義務の全部または一部を履行し、 契約を強引に求める」 としていた意見募集案から、 「契約を強引に求める」 は削除し、 「契約前に契約の義務の全部または一部を履行し、 実施前の原状回復を著しく困難とする」 場合を対象とした。 頼んでもいないのに草刈りをしてしまった場合などは対象だが、 どこまでが原状回復が著しく困難とされるのかが焦点だ。

勧誘の手間や交通費
「損失の補償を請求」
 勧誘にここまで時間や交通費をかけたのに、 なぜ契約しないのかと契約を迫られる場合がある。 意見募集案では、 「契約しないことで損失が生じると強調して告げ、 契約を強引に求めた」 場合の取消権が提起されていたが、 「当該消費者のために特に実施したとして、 損失の補償を請求する旨を告げた」 場合の取消権が規定されている。 
 マンションを勧誘され、 「業者から他都市からあなたのためにここまで来た。 断るなら交通費を払え」 と言われた場合などが、 対象事例として紹介されている。 
 無料だと思って家電の引き取りをお願いしたのに、 有料だったために断ったところ 「わざわざ上の階まで来たのに帰れない」 と言われた場合などが想定されていたが、 「労賃を払え」 などの請求がない場合は、 対象から外れると考えられる。

不利益事実の不告知
重過失の場合も対象
  「日照良好」 と説明しつつ、 隣に別のマンションが建つことを告げすに、 マンションを販売した場合。 これまでは、 利益になる事実を告げ、 なおかつ、 不利益になる事実を故意に告げない場合が取り消しの対象だったが、 重過失の場合も取り消しができるようにする。 
 別のマンションの建設計画の説明会が、 その事業者も参加できる状況で実施されていたなど、 「故意に近い著しい注意欠如がある場合」 を例に挙げている。 「他の事業者にも周知の事実であるような場合が対象」 と、 消費者庁は説明している。 
 このほか、 無効にできる不当な契約条項に、 ①消費者が後見、 補佐、 補助開始の審判を受けたことのみを理由に解除権を付与する条項②事業者が自らの責任を自ら決める条項―が追加される。 意見募集案から変更はない。

平均的損害の推定規定
改正案に盛り込まず
 現行の消費者契約法では、 解約時に事業者の平均的損害を超える請求をされた場合は無効とされているが、 消費者が事業者の平均的な損害を立証することは困難だ。 立証責任の転換が求められたが、 消費者委専門調査会の報告書は、 「事業の内容が類似する同種の事業者の平均的損害を立証した場合は、 その事業者の平均的損害と推定する規定」 を設けることを盛り込んだ。 にもかかわらず、 改正案骨子には、 平均的損害の推定規定は盛り込まれていない。 
 消費者庁は 「すべての消費者契約に適用することができる類似性を判断するための要件を、 法律で規定するのが困難だった」 として、 引き続き検討すると説明している。 
 消費者委員会の付言では、 判断力不足等につけ込んで過大な不利益をもたらす契約の取消権のほか、 事業者が配慮に努める義務に 「年齢等」 を含むことや、 消費者が契約締結前に契約条項 (改正民法の 「定型約款」 含む) をあらかじめ認識できるよう努める規定の導入を早急に検討することも求めていた。 これらにも対応されていない。 
 消費者庁は、 成人年齢引き下げの対応策として、 消費者契約法への契約取消権追加と併せて、 若者の自立を支援する消費者教育の充実などを挙げている。 しかし、 地方に配分される交付金が削減され、 自治体が消費者教育を縮小せざるを得ない状況にあることも大きな問題といえる。 
 今回の改正案は、 超高齢化、 成人年齢引き下げという重大な社会状況の変化に、 十分に対応できる改正とはいい難い。

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