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特商法 契約書面電子化交付可の議論

特商法改正
訪販など全取引で契約書面電子交付可
「立法事実ない」現場から厳しい意見
 消費者庁は、 今年の通常国会に提出予定の特定商取引法改正案に、 訪問販売など全ての取引形態で、 オンラインによる契約書面と概要書面の交付を可とする内容を盛り込む方向で調整していることが分かった。 消費者が希望し 「同意承諾」 した場合のみを対象にすると説明しているが、 「オンラインの訪問販売や訪問購入などあり得ず、 立法事実がない」 「不招請勧誘の現場では、 事業者の言いなりに 『同意承諾』 させられやすく、 消費者が同意もしていないのに同意欄に (チェック) を記入させられてしまうことは、 これまで何度も経験済み」 「消費者被害防止には、 事業者側に過剰に有利な改正を不用意に行わないことが必要。 事業者による書面交付を電子化する前に、 消費者からのクーリング・オフ通知の電子化を先に検討すべき」 などの厳しい意見が、 消費者行政職員、 消費生活相談員らから噴出している。(相川優子)

「事業者の言いなりに同意承諾させられる」
「デジタル化の検討、消費者側の書面から」
規制改革推進会議「電子交付可とすべき」
消費者庁「デジタル化へ検討進める」
 2020 年 11 月9日に開催された 「規制改革推進会議・第3回成長戦略ワーキング・グループ」 の議論の中で、 オンライン英会話の契約を例に、 特定継続的役務提供のオンラインで完結するサービスについて、 概要書面や契約書面の電子交付を可能とすべきではないかと指摘された。 これに対し、 消費者庁は、 「デジタル化を促進する方向で、 適切に検討を進めていく」 と回答していた。 
 消費者庁は、 規制改革会議の求めに応じ、 特定継続的役務提供のみではなく、 特商法で規制されている訪問販売、 電話勧誘販売、 訪問購入など 7 つの取引形態全てに、 消費者が同意承諾した場合は、 契約書面や概要書面のオンラインでの交付を可とする方向で検討を進めている。

訪販、電話勧誘の相談 高齢者が突出
若年者、成年年齢引き下げと重なる
  「そもそもオンラインの訪販や電話勧誘、 訪問購入などはなく、 立法事実がない。 契約書面の電磁的交付を考える必要性も実益も見当たらない」 「特商法の書面交付義務は 『構造的に消費者トラブルが発生しやすく、 悪質商法が多発している業態』 に義務付けられており、 苦情相談件数が大幅に減少していない中で、 規制緩和すべきではない」 「書面の電子化は特商法の大きな後退になる」 「許可制や届出制がある業法とは異なる。 オンラインで契約が完結する取引に限定すべきで、 全取引形態への導入は時期尚早」 など、 反対する意見が少なくない。 
  「訪問販売と電話勧誘販売は高齢者の相談割合が高い。 立法事実もない中で解禁するというのであれば、 再度、 事前勧誘拒否制度を併せて検討すべき」 「若年層はエステなどの特定継続的役務、 連鎖販売でのトラブルが多く、 成年年齢引き下げと書面交付電子化が重なる。 契約書面の重要性の認識が低く、 拙速な改正は、 トラブル増加につながる懸念がある」 などの指摘も出ている。 
 注文はクリックするだけで簡単だが、 解約可としながらメールでの解約を受け付けず電話を要求し、 電話がつながらないという 悪質通販事業者の手口が多発している。 事業者側の書面からではなく、 まずは、 消費者側が出すクーリング・オフ書面の電子化から検討すべきではないのか。

デフォルト設定で気づかないまま同意
電子書面 改ざんは容易
 相談現場にかかわる大多数の人が、 拙速な改正に驚きと疑問を投げかけ、 実務上の多くの課題を挙げた。 
  「電気通信事業法では、 利用者が承諾した場合は電磁的交付を認めているが、 申し込みフォームの項目の中に電子書面での交付を希望することがデフォルト設定され、 同意した認識がないまま、 契約書の存在に気付かないという相談事例が出ている」 「訪問販売や訪問購入で行政処分の対象になるような事業者は、 昼間、 家にいる高齢者を狙って勧誘している。 メールで届いた契約書の保存方法や PDF の開封方法を知らないまま、 同意したことにされる可能性が高い」 「書面の受け取りの有無について事業者と消費者で主張が食い違った場合、 事業者は立証しやすいが、 消費者のハードルは高くなる。 サーバーに入った場合は到着したこととするのか、 通信障害などを消費者側がプロバイダーに確認することになるのか、 操作ミスで消去してしまった場合はどうするのか」 「クーリング・オフの起算点の問題もある」 「スマートフォンの小さな画面で確認できるのか、 何度もスクロールする必要がある。 プリンターがない人、 スマホから印刷する方法が分からない人も少なくない」 「紙の契約書面は、 『赤字+JIS 規格8ポイント以上』 で、 消費者はクーリング・オフが付与されていることを容易に認識でき、 権利保護につながる。 電子交付で同様の視認性や可読性をどう担保するのか」 など、 解決すべき課題があまりに多い。 
 加えて、 施行規則やガイドラインで 「書面交付とは認められず、 クーリング・オフ可」 とする場合を規定しても、 実際に、 あっせん交渉では、 被害回復できない可能性が高いとも指摘する。 今でも事業者が不交付や書面不備を認めず争うケースが多い。 不交付や消去で争っている場合、 オンライン上の書面は容易に改ざんできる。 迅速な行政処分が必要だが、 改ざんされれば、 処分も困難になる。

相談現場、流出防止でメール添付制限
個人のスマホ安易に確認できるのか
 大半の消費生活センターでは、 セキュリティ上の問題、 メール添付のデジタルデータは流出や拡散の恐れがあることから、 契約書を FAX や郵送で送ってもらって相談対応をしている現状がある。 
 具体的な事例では、 「高齢者宅を電気の検針票を見せてほしいと訪問され、 集金が安くなると電力会社を変更させられたという相談は、 近くのコンビニから契約書を FAX してもらって対応した。 電磁的交付を同意承諾させられた場合、 高齢者への対応が遅くなる」 など。 「さまざまな情報が入っている個人のスマートフォンを相談現場で安易に確認することができるのか」 という問題も出てくる。 
  「光卸回線など電気通信サービスを契約した場合、 代理店独自の家の見守りなどのオプション契約には特商法上の書面交付が必要だが、 ただでさえオプション契約をしたという認識がない消費者が、 同意承諾で電磁的交付に誘導され、 オプション契約をしたことさえ気づかない」 などの問題も指摘されている。 
  「認知機能が衰えた高齢者が 『床下工事をしてお金を支払った』 と話したため、 地域包括センターが調べたところ契約書が見つかった。 訪販による高額な床下工事でクーリング・オフ書面を送付したが、 電子交付の場合、 解決が困難になると思われる」 「パソコンやスマホで契約した内容について 『言われるままに操作したので覚えていない、 契約した相手がだれか分からない。 規約があるというが探せない。 メールがどこに行ったか分からない』 などの相談が増えている。 すべてネット内で完結した場合、 消費生活センターが事態の把握すらできず、 置き去りになる相談者が必ず生まれる」 など、 救済できるはずの高齢者が置き去りになる懸念も指摘されている。

デフォルト設定禁止、説明義務は必須
「事前勧誘拒否制度」の検討を
  「最低限デフォルト設定の禁止は必須」 「罰則付きで重要事項の説明義務を課すなどの措置は不可欠」 「事業者に一定期間保存義務を課し、 事後に改ざんされることがない技術的措置義務を課す」 「苦情件数の減少実績もないのに、 事業者側に恩恵を与えるのであれば、 70 歳以上の高齢者は、 親族の立ち合いがなければ電子書面の使用は不可するなどの要件が必要」 「65 歳以上の高齢者、 障害者には、 書面交付と罰則付きの重要事項説明義務が必要」 「消費者保護のための訪販、 電話勧誘等の事前勧誘拒否制度をセットで検討すべき」 など、 導入が避けられない場合に取るべき対応策についても意見が出ている。 
  「同意の立証責任は事業者側とする」 「デフォルト設定で同意した場合は、 同意と見なさない」 「『電子書面か紙の書面かを選択できる表示』 『購入しない』 『契約しない』 の選択肢の表示を義務付ける」 など提案もある。 
 昨年8月に改正内容をまとめた消費者庁の検討会では、 議題にすら上がっていない。 検討会での慎重で丁寧な議論が求められる。

消費者団体からも意見書
拙速な書面交付電子化に反対
 全国消費者行政ウォッチねっとは12 月 23 日、 特定商取引法上の書面交付の拙速な電子化に反対する意見書を出している。 特定継続的役務提供、 連鎖販売取引、 業務提供誘因などを含め、 拙速な電子化に強く反対し、 オンライン特有のトラブル予防のための規制強化を検討するよう求めている。 
 全国消費者団体連絡会も 12 月 25 日、 現状での法改正は拙速として、 規制の実効性や消費者保護の確保、 認めた場合の弊害などについて慎重に検討することを求める意見書を出した。 対面で契約する場合には紙の書面を直接交付することができるため、 あえて電子データでの送信を認める必要性はないなどとして、 本人の同意を丁寧に確認することなく、 デフォルトで同意とするような方法には強く反対するとしている。